研究課題/領域番号 |
15K19068
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研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
角田 優子 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (90748435)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胆管内乳頭状腫瘍 / 胆道癌 |
研究実績の概要 |
胆管癌の前癌/前浸潤性病変として胆管内乳頭状腫瘍 (IPNB)が注目されている。WHO分類では「拡張した胆管内の繊細な線維血管性間質を伴う非浸潤性の乳頭状もしくは絨毛状腫瘍」とされているが診断基準が確立しているとはいえず、類似病変に関して議論されている。 2002年~2014年に当院で外科切除された胆管腫瘍354例のうち、乳頭状腫瘍52例を、由来癌症例を含め組織学的に典型的なIPNBと、高さが10mmに達しない、管状成分が30%を超える、異型が目立つ、間質の幅が広い、のいずれかに該当する非典型例に分類して比較した。典型例24例、非典型例28例で、両群の年齢、性別、腫瘍形質(胆膵型、腸型、胃型、好酸型)に差はなかった。非典型例の殆どが高さ10mm未満であった。典型例は肝内腫瘍が多く、進行例は少なく、粘液過剰産生例が多かった。 IPNBは膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN)の胆道でのカウンターパートとする位置づけが提唱されていることから、上記52例を膵IPMNとの類似性を形態的に評価し、A群: 極めて類似、B群: 類似するが細胞異型や組織構築がやや異なる、C群: 一部のみ類似、D群: 類似しない、の4群に分けて比較したところ、A群19例、B群18例、C群5例、D群10例であった。A群は主に肝内、肝門部胆管に発生し、非浸潤例の割合が高く、異型度も低かった。形質は胃型が多く、胆膵型は少ない。腫瘍は丈が高く、粘液産生が目立ち、膵IPMNの胆管におけるカウンターパートといえた。B群は肝内、肝門部、遠位胆管に発生し、形質は腸型が多いが、腸型IPMNに比して粘液産生が少なく、細胞異型も強い。対してC・D群は肝門部および遠位胆管に発生し、ほぼ全例が浸潤癌で、進行例の割合が多かった。 IPNBは複数の基準で分類できるheterogenousな症例群と考えられ、今後、発生機序の差異等の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. IPNBの臨床病理学的検討の対象例の抽出、検討、予後などの調査は計画通り行えたが、主腫瘤部から離れた部位の微小腫瘍性病変の検討、付属腺に由来するIPNBのサーベイは人員減等によるエフォート不足のため十分行えていない。また、微小腫瘍病変の遺伝子解析については、当院レーザーマイクロダイセクション機器の老朽化による使用困難が判明したため今後も十分行えない可能性が生じた。 2. 新鮮材料の収集と保存材料を用いた遺伝子解析については、当センターにおける胆道腫瘍の手術症例で、2014年から実施されている当センター研究所の遺伝子検索プロジェクト「HOPE」と共同で行う予定であったが、2016年3月末現在までに該当は2例のみであり、比較検討は困難である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はすでに臨床病理学的検討を行った52例について、まず遺伝子解析を進める。 1. DNA試料の抽出 ホルマリン固定パラフィン切片 (病理組織切片)から腫瘍を単離し、DNAを抽出する (DNA試料)。この際、レーザーキャプチャマイクロダイセクションは使用できなくなったため、用手的に腫瘍の単離を行う。現在、DNA抽出中である。 2. 体細胞遺伝子変異の解析 次世代シーケンサーを用いてDNA試料から癌遺伝子、癌抑制遺伝子の体細胞遺伝子変異の解析を行う。対象遺伝子は現在AKT、EGFR、GNAS、NRAS、ERBB2、KIT、PDGFRA、TP53、APC、KRAS、PIK3CA、BRAF、PTEN、SMAD4などを予定しているが、研究の進行に伴い、対象遺伝子を変更、追加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫染色は当院既存の抗体を用いたため、新たに購入する必要が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シーケンサー試薬が為替レートにより高騰したため、次年度使用額を試薬購入に充てる。
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