研究課題/領域番号 |
15K19068
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研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
角田 優子 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (90748435)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胆管内乳頭状腫瘍 / 胆道癌 |
研究実績の概要 |
胆管癌の前癌/前浸潤性病変として胆管内乳頭状腫瘍 (IPNB)が注目されている。WHO分類では「拡張した胆管内に見られる繊細な線維血管性間質を伴う非浸潤性の乳頭状もしくは絨毛状腫瘍」とされているが、診断基準が確立しているとはいえず、類似病変に関して議論がなされている。IPNBでは典型例以外に、多種の病像を示す例 (非典型例)が少なからず経験されることから、これら非典型例の臨床病理像ならびに関連分子、遺伝子の異常を明らかにし、IPNBの多様性、また全貌を明らかにする。IPNBの亜分類を試み、さらにIPNB診断のバイオマーカーを開発することを目的とする。 2002年~2014年11月に当院で外科的に切除された胆管腫瘍354例のうち、乳頭状腫瘍52例 (由来癌症例を含む)について、組織学的に詳細な観察を行った結果、典型的なIPNBと典型例とはやや異なる形態の非典型例に分類が可能であり、現在定義されているIPNBは複数の基準で分類できるheterogenousな症例群であると考えられた。そこで、当該各群の遺伝子変異の差異を比較するために52例の代表的な割面を選定し、作成した10μm厚の未染色標本各5枚から用手的にIPNBをダイセクションし、Qiamp FFPE DNA抽出キット (Qiagen)を用いてパラフィン包埋切片からDNAを抽出した。得られたDNAサンプルの質をQC Kit (Illumina)を用いて評価し、解析可能と考えられた52例中41例について次世代シーケンサーMiseqにて、腫瘍パネルTruSight Tumor 26 (Illumina)を用いて代表的な体細胞変異 (AKT、EGFR、GNAS、NRAS、ERBB2、KIT、PDGFRA、TP53、APC、KRAS、PIK3CA、BRAF、PTEN、SMAD4)の有無を検索した。現在、得られたデータを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
IPNBの形態的な分類と臨床病理学的検討の対象例の抽出、検討、予後などの調査、因子との関連についての解析は計画通り行えた。遺伝子変異の検索はFFPEサンプルからの良質なDNA抽出の難しさにより52例中11例が次世代シーケンサーで解析できず、人員減等によるエフォート不足のため進行が遅れており、現在もデータ解析中の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は遺伝子データの解析を進め、体細胞変異と臨床病理学的特徴との関連について検討し、IPNBの診断基準を確立する基礎データを作成する予定である 。また、DNAの質が悪く次世代シーケンサー解析を行えなかった11例については、IPNBにおいて知られているGNASおよびKRAS変異の有無につき、パイロシーケンス法などを用いての検出を試み、臨床病理学的特徴との関連を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAの質の問題により次世代シーケンサー解析を行えなかった症例に対する試薬の未購入
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次年度使用額の使用計画 |
遅延していた研究に必要な試薬の購入に充てる。
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