研究課題/領域番号 |
15K19070
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
沖田 結花里 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (30743710)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | EMT / MafK / Gpnmb / 分子標的治療 / 環状ペプチド |
研究実績の概要 |
がんの発生、進展には多くの分子異常が関わることが知られている。その中でもがんの成立に強く寄与する変化を知ることは、発がんの分子メカニズムを明らかに出来るだけでなく、がんの分子標的治療の有力な標的になり得る。上皮間葉転換(EMT)は、がんの浸潤、転移および幹細胞様性質の獲得にも寄与していることが報告されており、その制御機構を解明することができれば、がんの発生および進展について理解できる可能性がある。私たちは新規EMT誘導因子として、転写因子MafKおよびその標的遺伝子である膜タンパク質Gpnmbを同定した。本研究は、MafK-Gpnmb経路によるEMT誘導と造腫瘍性獲得の分子メカニズムを明らかにし、これを標的とした分子標的治療薬の開発を目指すものである。 平成27年度中に、MafKの翻訳後修飾がE-cadherinの転写抑制に重要であることが示唆され、Gpnmbのいくつかのドメインが腫瘍形成能誘導に重要であることで示された。しかしGpnmbの下流シグナル経路同定には至っておらず今後さらなる解析が必要である。またGpnmbに特異的に結合する環状ペプチドのスクリーニングを終え、それを利用した抗腫瘍効果の検証を開始した。Gpnmbを標的とした分子標的治療薬の開発に向けた大きな一歩である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. MafK-Gpnmb経路によるEMT誘導と腫瘍形成能獲得機構の解明については、MafKの翻訳後修飾がE-cadherinの転写抑制に関与している可能性が示唆された。Gpnmbの下流シグナル伝達経路の同定に関しては、プロテオミクス解析を試みたが、因子の同定には至っておらず、今後さらなる検討が必要である。またGpnmbのドメイン解析に関しては、腫瘍形成に関わる有望な結果が得られた。 2. MafK-Gpnmb経路の腫瘍形成や転移への役割の解析については、細胞および個体レベルで腫瘍形成と転移を検証する実験系はほぼ予定通り確立された。 3. Gpnmbを標的とした環状ペプチドのスクリーニングと応用については、Gpnmbに特異的に結合する環状ペプチドが得られ、それを利用して腫瘍形成への影響について細胞レベルで検証でき、ポジティブな結果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
MafK-Gpnmb経路のEMT誘導および修養形成能獲得機構についてより詳細な解析を継続する。 Gpnmbの特異的に結合する環状ペプチドを利用し、腫瘍抑制および転移抑制効果について個体レベルで検討する。
|