研究課題
昨年度から引き続き、グリオーマ細胞においてガングリオシドGD3の発現に依存して発現誘導される遺伝子として同定した Apitd1、Tslp、Mmp12 の機能解析を行った。これら三つの遺伝子産物について、免疫組織化学染色法にて、野生型マウス由来グリオーマ組織における高発現、およびGD3合成酵素遺伝子欠損マウス由来グリオーマ組織における相対的な低発現を観察した。特にApitd1については、初代培養アストロサイトに強制発現させることにより、細胞接着能および細胞浸潤能を低下せさることを明らかにした。一方、グリオーマ組織を用いたマイクロアレイ解析では、野生型マウス由来グリオーマ組織に比べ、GD3合成酵素遺伝子欠損マウス由来グリオーマ組織において、Mmp12 以外にも多くのMmpファミリー遺伝子群の発現低下が観察された。その中でもMmp9は GD3合成酵素遺伝子欠損マウス由来初代培養グリオーマ細胞にGD3合成酵素を強制発現した細胞において有為な発現上昇が観察され、その発現がGD3合成酵素の発現に依存的であった。ここでさらにMmp9の発現誘導メカニズムの詳細を解明するため、転写因子に注目した。文献とマイクロアレイ、qRT-PCRの結果より発現調節に関与すると考えられる分子を絞り込んだところ、候補分子として転写因子Ap2αを同定した。その後、初代培養アストロサイトを用いたChIP-PCR解析にてAp2αのMmp9プロモーター領域への結合、またその結合がMmp9遺伝子の発現誘導をしうることをルシフェラーゼアッセイによって観察した。以上の結果より、グリオーマにおけるガングリオシドGD3の発現は、Ap2αを介したMmp9の強発現を誘導し、腫瘍悪性度を増強していることが示唆された。
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