研究課題/領域番号 |
15K19074
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
臧 黎清 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 助教 (10437105)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 耐糖能異常 / ゼブラフィッシュ / 肥満モデル / 遺伝子発現抑制 / CRISPR-Cas9システム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肥満に伴う耐糖能異常発症の治療標的遺伝子および早期診断バイオマーカーの探索を行うことである。耐糖能異常とは、糖尿病と診断されるほどではないが血糖値が高くなっている状態である。糖尿病や耐糖能異常の診断には、血糖値やHbA1c などに依存した指標が用いられているが、糖尿病を超早期、いわゆる前病段階で診断するためには、初期の代謝異常を鋭敏に捉える新たなバイオマーカーが必要である。平成25-26 年度科学研究費若手研究Bの助成を受け、我々は「食餌性肥満ゼブラフィッシュ」の網羅的遺伝子発現解析結果から、耐糖能異常発症のゲノムメカニズムを明らかにしている。 本研究では、これまでの研究成果である糖代謝関連遺伝子群に対し、発現量を低下させると高血糖の改善が期待される遺伝子に対しては、各自のモルフォリノ・アンチセンス・オリゴヌクレオチド(MO)を合成した(計8種類)。次に、食餌性肥満ゼブラフィッシュを作製し、肥満の進行と同時に、週2 回MO の腹腔内注射による一過性ノックダウン処理を施すことで、同遺伝子発現抑制による耐糖能異常への治療効果を検証した。その結果、heme oxygenase-1 (hmox1)などの4つ遺伝子の発現抑制することにより、食餌性肥満ゼブラフィッシュの空腹時血糖値の上昇を有意に抑制した。次に、選別された治療効果のある遺伝子の「CRISPR-Cas9システム」を構築し、マイクロインジェクションによりmutant lineのF0世代を作成した。Heteroduplex Mobility Analysisの結果、ミュタント作成が成功していることが確認できた。今後このMutant lineを用いて、成魚での過剰給餌誘導に対する確認したのち、マウスでの動物実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は平成27年度の研究実施計画通り遂行されており、特に遅滞はない。また、研究成果も前述の耐糖能異常調節候補遺伝子群から遺伝子操作のターゲットを選別することができ、おおむね研究計画立案通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は2 型糖尿病モデルマウスを用いた治療標的候補遺伝子のバリデーション・スタディを中心に行う。まず、前述の4遺伝子らのマウス配列に対応するsiRNA(short-interfering RNA)を作製する。次に、自然発症2 型糖尿病モデルマウスNSY/Hos に対し、標的遺伝子のsiRNA を静脈注射による発現抑制実験を行う。以上の研究計画により、ゼブラフィッシュで確認された治療標的候補遺伝子のバリデーションを確立し、糖尿病や耐糖能異常の新規治療標的遺伝子を確定する。また、インスリン抵抗改善薬やブドウ糖吸収阻害薬のαグルコシダーゼ阻害剤などの血糖降下剤をNSY/Hos マウスに経口投与し、治療標的遺伝子・およびそのタンパク質の発現量の変化を検討し、糖尿病およびその関連疾患の早期診断や病態評価に有用な新規バイオマーカーになるかを検討する。
平成28年度の研究費は、主に自然発症2 型糖尿病モデルマウスNSY/Hosや試験化合物の購入に使用する。また適宜研究成果は学会にて発表するため、その費用として使用する。
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