本研究の目的は、肥満に伴う耐糖能異常発症の治療標的遺伝子および早期診断バイオマーカーの探索を行うことである。今年度は、2 型糖尿病モデルマウスを用いた治療標的候補遺伝子のバリデーション・スタディを目標とした。 初年度は、2型糖尿病モデルゼブラフィッシュにおけるheme oxygenase-1 (hmox1)と遺伝子Xの発現を抑制することにより、空腹時血糖値の上昇を有意に抑制し、耐糖能異常への治療効果を発見した。そこで本年度はげっ歯類動物でこれらの遺伝子について検証試験を行った。これらの遺伝子に対し、マウス用siRNA(short-interfering RNA)を複数デザイン・合成し、各siRNAのノックダウン効率をマウス肝がん細胞株Hepa 1-6を用いて検討した。最もノックダウン効率の高いsiRNAを大量合成し、血中での分解を抑制するため、Dicetylphosphate-diethylenetriamine (DCP-DETA)を含んだポリカチオンリポソーム(PCL)をベースとした多重膜PCL/siRNA 複合体(siRNA-Lipoplex)を調整した。このsiRNA-Lipoplexは血清中においても1週間以上、安定であった。そしてBALB/cCrSlc 野生型のマウスを用いて、尾静脈からsiRNAを投与し、hmox1と遺伝子Xの発現レベルを解析し、このsiRNA-Lipoplexにより目的遺伝子の発現抑制を確認した。一方、自然発症2型糖尿病モデルNSY/Hos系統マウスを使用し、予備実験として高脂肪食負荷試験を行った。高脂肪食誘導されたNSY/Hosマウスは体重増加とともに、空腹血糖値も正常食群より有意に上昇した。最終的には、NSY/Hosマウスに対し、Hmox1と遺伝子XのsiRNA-Lipoplexを上記の予備試験の条件で投与し、空腹時血糖値・肝臓・膵臓組織への影響を解析し、バリデーション試験を行った。 本研究成果の一部をScientific Reports(2017)に発表した。
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