研究実績の概要 |
コレラ毒素(Cholera toxin:CT)は、免疫増強剤(免疫アジュバント)としてTh17型免疫応答や、免疫グロブリン産生を誘導することが知られている。しかし、その分子機構については不明な部分が多い。 我々は、マクロファージ細胞株において、CTとリポ多糖(LPS)の共刺激により、炎症性サイトカインIL-1βの産生が相乗的に誘導されることを見出した。また、CT単独刺激によりアルギナーゼ-1(Arginase I,ArgI)を介したアルギニン代謝経路が活性化されること、CTとLPSの共刺激によりヒスチジン脱炭酸酵素(Histidine decarboxylase:Hdc)を介したヒスタミン合成経路が活性化されることも明らかにした。そこで本研究では、これらの細胞内代謝経路がCTとLPSの共刺激によるIL-1β産生誘導に関与するかどうか、検討を行った。H27年度ではアルギニン代謝経路に関与する機能分子について、H28年度ではヒスタミン代謝経路に関与する機能分子について検討した。 マクロファージ細胞株において、ArgIのsiRNAやアルギニン代謝経路の阻害剤の添加により、CTとLPSによるIL-1β産生誘導が顕著に障害された。しかし、ArgI遺伝子欠損マウス由来のマクロファージにおいて、CTとLPSによるIL-1β産生誘導は正常に認められた。また、Hdc遺伝子欠損マウス由来のマクロファージにおいても、CTとLPSによるIL-1β産生誘導は正常であった。 以上の結果から、CTとLPSによるIL-1β産生誘導は、アルギニン代謝経路やヒスタミン代謝経路には依存しないことが示唆された。マクロファージ細胞株において、CTとLPSによる共刺激により、アルギニン代謝やヒスタミン代謝以外に種々の代謝経路が活性化していることを確認しており、今後は、それらの代謝経路について検討を進める予定である。
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