研究課題
PKM2を標的とした治療法確立のために、1)PKM2は癌遺伝子として治療標的と成り得るのか;2)PKM2の発現抑制が正常細胞に対して影響するのか;3)なぜ、癌はPKM1ではなくPKM2型となるのかを明らかにすることを目的とした。1.胃癌におけるPKM2 健常ボランティアの正常胃粘膜においてPKM2が、PKM1より優位に発現していた。胃癌ESD症例、手術症例の癌部でも、PKM2が優位に発現しており、その発現は正常粘膜と比べ有意に増強していた(図1)。手術症例80例においてPKM2発現と臨床病理学的因子との関連を検討すると、PKM2高発現群で静脈侵襲例が有意に多かった。PKM2発現抑制胃癌細胞株は、コントロール細胞株と比べ、in vitro で細胞増殖能、遊走能、足場非依存性増殖能、sphere形成能が低下し、in vivoにおいて皮下腫瘍増殖と肝転移が抑制されていた。また、PKM2ノックダウン胃癌細胞ではセリン依存性の細胞増殖亢進を認めなかった。さらに、CagAはErk経路を介してPKM2の発現を誘導していた。2. 膵癌におけるPKM2 10例の膵癌手術検体を用いて、癌部、正常膵管をマイクロダイゼクションによって削り出し、PKMの発現を検討すると、正常部、癌部ともにPKM1と比べPKM2が優位に発現していた。正常部と比べ癌部でPKM2の高い発現を認めた。膵癌細胞株ASDPC-1,MIAPaCa-2, PANC-1において、PKM2がPKM1より優位に発現していた。PKM2をこれらの細胞株でノックダウンすると細胞増殖能はin vitro, in vivoにおいて抑制された。さらに、細胞移動能も低下していた。以上の結果より、PKM2は胃癌、膵癌の進展に重要な役割を演じており、治療標的となる可能性が示唆された。
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Cancer Sci
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10.1111/cas.13211