プロテインホスファターゼ6型(PP6)の発がんへの関与を明らかにする目的で、PP6と結合するタンパクのスクリーニングを行い、中心体のタンパク、CP110を同定した。そこでPP6の触媒サブユニット(Ppp6c)のノックダウンを行い、中心体の数や分離異常が起こることを確認したことから、PP6は中心体の機能制御に必須であり、おそらく、がん抑制遺伝子として働く可能性を考えた。そこで、がん抑制遺伝子として働くか否かを検証するため、サイトケラチン14プロモーター(CK14)により、扁平上皮の基底層においてCRE-TAMが発現するマウスと、floxed-Ppp6cを持つマウスを掛け合わせて、CK14-CRE-TAM:Ppp6cflox/floxマウスを作成した。本マウスを用いて皮膚の2段階発がん実験を行い、PP6の機能が欠失している皮膚では、DMBA誘導発がんに対する感受性が亢進している事を明らかとした。そのメカニズム解明を行い、PP6活性を欠損している組織においては、NFkBシグナルが増強していることが明らかとなった。次に紫外線による発がんにおけるPP6の機能を解析した。その結果、紫外線照射により、Ppp6c欠損皮膚では腫瘍発生が著しく亢進することが分かった。そのメカニズム解明を行い、Ppp6c欠損皮膚に対して紫外線照射を行うと、正常皮膚に比べて、細胞死が著しく亢進していることとが分かった。また、形成された扁平上皮癌において、γH2AX陽性細胞、p53陽性細胞が増加していることが確認され、DNA修復の傷害と代償性の過形成が、腫瘍形成の原因の1つである事が示された。
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