研究実績の概要 |
3つの多包条虫セリンプロテアーゼインヒビター分子(SerpimEmu, Serpin2Emu, Serpin3Emu)について、大腸菌発現系を用いて組換えタンパク質を作成した。 このうち組換え SerpinEmuのみが可溶性となり、他の2つは不溶性となった。酵母を用いての組換えタンパク質作成の結果も同様であった。しかしながら、コムギ胚を用いた無細胞系での発現により可溶性の組換えタンパク質が得られた。そこで補体活性測定キットを用いて、これらのタンパク質の補体活性阻害能を調べたところ、3種のタンパク質全てにおいて補体活性阻害能は認められなかった。ただし、これら3つのSerpin分子に対するポリクローナル抗体を用いた免疫染色の結果から、SerpinEmuおよびSerpin3Emuは胚細胞層および原頭節に発現が見られたが、Serpin2Emuについては石灰小体に強く発現していることが明らかとなった。これらのタンパク質のうちSerpinEmuについてはセリンプロテアーゼインヒビター活性が認められることから、補体活性阻害以外の機能を果たしていると考えられた。その他2つのタンパク質についても補体活性阻害能以外の機能の解析が必要である。これらの成果は論文として国際誌に発表した。 また、条虫におけるRNAi法の開発について、虫卵もしくは六鉤幼虫を二本鎖RNA溶液に浸漬、これを培養下で観察することを考えた。孵化した六鉤幼虫をフィーダー細胞を用いることにより擬嚢尾虫まで発育させることに成功した。これを用いてHoxならびにWnt等発生に重要と考えられる複数の遺伝子について2本鎖RNAによるRNAi法を試みたが、発現抑制が明らかな形質としては確認されなかった。今後は導入するRNAの種類、導入方法等について検討を続ける予定である。
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