研究課題
病原真菌カンジダは免疫不全患者において重篤な日和見感染症を引き起こす。カンジダ種の中でもカンジダ・グラブラータは、キャンディン系(細胞壁合成阻害)やアゾール系(エルゴステロール合成阻害)の抗真菌薬に対する耐性菌の出現率が高く、患者からの分離頻度が年々増加し問題となっている。本研究では、宿主細胞への腸管粘膜からの感染機構の解明を目的として、宿主細胞への感染に必要な因子、特に宿主細胞への付着に必要な因子の探索を行なった。宿主細胞への付着に必要な因子のスクリーニングとして、(1)マウスへの口腔摂取、(2)腸管からの菌体の回収、(3)腸管への付着率低下株の次世代シークエンサーによる同定の工程からなる系を構築した。今年度は、昨年度未確立だった(3)の次世代シークエンスによる菌株の同定系を確立した。本スクリーニングによって、付着因子の同定までには至らなかったが、スクリーニングの過程で有用な抗真菌剤の標的因子となりうる病原因子として、エルゴステロール合成系の酵素Erg25pを同定した。グラブラータのアゾール耐性の要因として、アゾール系薬剤により欠失したエルゴステロールの代わりに宿主コレステロール取り込み、利用する機構が知られている。他のエルゴステロール合成系の必須遺伝子の発現抑制株の致死性が血清の添加により抑制されるのに対し、ERG25発現抑制株の致死性は抑圧されなかったことから、Erg25pが宿主内での血流感染時に必須な因子であることが示唆された。蚕を用いた感染実験評価法によっても、Erg25pが宿主内でのグラブラータの生育において必須であることが明らかとなった。
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