Helicobacter suis (H. suis)は、マウス胃粘膜に感染すると胃粘膜B細胞から産生されたIFN-γにより100%の確率で胃MALTリンパ腫を発症させことが知られている。本研究課題では、細菌感染症からインターフェロン誘導に重要な自然免疫系であるToll様受容体4(TLR4)シグナル伝達経路に着目し、H. suis感染からIFN-γを誘導させる新たな分子メカニズムを解明し、胃MALTリンパ腫発症における新規治療法を模索することを目的とする。平成28年度において我々は、H. suis感染マウス胃粘膜に浸潤したB細胞上の遺伝子発現解析を行った。その結果、H. suis感染マウス胃粘膜に浸潤したB細胞は、非感染マウスB細胞に比べて、1型IFNs受容体、ならびに、IFN-γの発現が有意に上昇していた。これらの知見により、H. suis感染後の胃粘膜上皮細胞から産生された1型IFNsは、胃粘膜に浸潤したB細胞上に高発現した1型IFNs受容体に相互作用し、B細胞からのIFN-γの産生を促進することで、胃MALTリンパ腫発症に寄与していることが示唆された。 また、1型IFNs発現上昇と胃粘膜B細胞との相互作用におけるIFN-γ活性化機構について解析を行った。その結果、組換えIFN-α、βで刺激したリンパ腫由来B細胞株では、時間依存的にIFN-γの発現が上昇していた。さらに、培養上清中のIFN-γ産生についても同様に増加していた。これにより。H. suis感染後に誘導される1型IFNsは、胃粘膜B細胞を刺激する結果、IFN-γの産生を加速させ、胃MALTリンパ腫発症に密接に関連していることが明らかとなった。
|