研究課題
日和見感染症患者における肺炎には、感染初期において咽頭の常在菌としても存在する黄色ブドウ球菌の感染が認められるが、在院日数の長期化に伴って緑膿菌感染へと移行していく。このような現象は臨床においては比較的古くから知られているが、菌交代の分子メカニズムについては、ほとんど明らかにされていない。本研究では、黄色ブドウ球菌感染状態から経時的に緑膿菌感染状態へと菌交代が起こる現象の分子レベルでの解明を目的とした。この課題において、緑膿菌の攻撃に対する黄色ブドウ球菌の防御因子の探索、及び緑膿菌に対する黄色ブドウ球菌の攻撃因子の探索の二面に関して研究を進めてきた。その際、トランスポゾンによる変異株ライブラリを作成し、これを利用してそれぞれの因子に関連した遺伝子の変異株を得ることで、解析を行った。1 緑膿菌の攻撃に対する、黄色ブドウ球菌の防御因子の探索緑膿菌の培養上清を含んだ培地に播種すると、増殖が著しく阻害される黄色ブドウ球菌と、あまり影響を受けない黄色ブドウ球菌が存在する。この現象の探索のため、トランスポゾン変異株ライブラリを用いて、この現象に関与する遺伝子の探索を行ってきた。現在、スクリーニング作業が終了し、各候補遺伝子の変異株を作成中である。2 緑膿菌に対する、黄色ブドウ球菌の攻撃因子の探索緑膿菌を重層した培地に播種すると、緑膿菌の発育阻止帯を形成する黄色ブドウ球菌と形成しない株に分かれる。市中感染型黄色ブドウ球菌TY825株のトランスポゾンランダム変異株ライブラリの再構築を行った。現在、候補遺伝子の変異株を作成中である。
すべて 2016
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Microbiology and Immunology
巻: 60 ページ: 148-159
10.1111/1348-0421.12359