研究課題/領域番号 |
15K19096
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
原國 哲也 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 研究員 (60593598)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 管出血性大腸菌(EHEC) / 志賀毒素(Stx) / サブユニットワクチン / モノクロナル抗体 / リフォールディング / コイルドコイル分子 / 5量体 |
研究実績の概要 |
本研究の最大の目的は、志賀毒素(Stx)に対するヒト用トキソイドワクチンを構築することである。また、Stx1及びStx2を中和可能なB鎖標的型ヒト化モノクロナル抗体を開発し、将来的に抗体医薬品として医療現場での応用を目指すための技術基盤を構築する。 平成27年度は、均一性の高い志賀毒素トキソイドワクチンを大量に精製する方法を検討した。はじめに、モデル抗原(コレラ毒素B鎖)で得られた知見(Tamaki et al., 2016)を基に、志賀毒素B鎖のニッケルカラム精製後のリフォールディング法によって均一性の高い5量体分子として作出することに成功した。また、作出した志賀毒素トキソイドワクチンを性状および免疫学的解析した結果、1型と2型ではその分子安定性に決定的な違いがみられ、1型はB鎖単独でワクチン効果が見られるのに対し、2型はコイルドコイル分子(COMP)との融合が必要であった。 よって、平成28年度のモノクロナル抗体(mAb)開発のための免疫源としては、1型はB鎖単独、2型は5量体分子が不安定なStx2B よりも、安定しているStx2B-COMP5量体分子を用いることにした。
志賀毒素トキソイドワクチンの構築において、同様のAB5型毒素であるコレラ毒素をモデル抗原とした。その発現・リフォールディング・精製法について新たな知見が得られたため、学術論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
均一性の高い志賀毒素トキソイドワクチンを大量に精製する方法を検討した。はじめに、モデル抗原(コレラ毒素B鎖)で得られた知見(Tamaki et al., 2016)を基に、志賀毒素B鎖のニッケルカラム精製後のリフォールディング法によって均一性の高い5量体分子として作出することに成功した。 次に、StxBとコイルドコイル分子(COMP)との乖離を検討した。その結果、Stx1B-COMP(1型)では、トロンビンで切断できず、両モイエティを乖離させることが不可能であった。一方、Stx2B-COMP(2型)では、B鎖とCOMPを乖離させることができた。以上の結果は、Stx1BとStx2Bとでは、その分子安定性に決定的な違いがあることを示しており、Stx1Bは、5量体分子が安定していることを示唆している。 最後に、これらのトキソイドワクチンを用いてマウスに免疫し、志賀毒素で攻撃試験した。その結果、1型はCOMP融合の有無に係らず90~100%の生存率を示したが、2型はCOMP融合型で生存率が100%であったのに対し、非融合型では、50%と減少した。また、ベロ細胞での毒素中和試験では、攻撃試験と同様に、1型ではCOMP融合の有無に係らず、B鎖5量体誘導抗血清で中和能活性が認められたのに対し、2型ではCOMP融合誘導抗血清のみで中和能が確認された。また、これらの誘導抗血清によるマウスへの受動免疫後の攻撃試験においても、同様の結果であった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画通り、平成27年度で試作したStx1B及びStx2Bトキソイドワクチンを用いてStx中和モノクロナル抗体を試作する。この目的のため、特に、Stx1B及びStx2B-COMPをモノクロナル抗体作成用の抗原として用いる。また、モノクロナル抗体作成にはハイブリドーマ法を用いる。試作したモノクロナル抗体の中和機能解析には、Vero細胞を用いた中和試験或いは志賀毒素(或いは、試作したStx1BおよびStx2Bトキソイドワクチン)とその受容体(Gb3)との結合阻害をELISA法を用いて検証する。また、これらのモノクロナル抗体を接種することで、毒素攻撃を耐過することが可能か検証する。
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