研究課題/領域番号 |
15K19102
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
祝 弘樹 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (70443116)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | M. tuberculosis / PE_PGRS62 / ABCA3 / lamellar body |
研究実績の概要 |
これまでに結核菌PE_PGRS62は病原因子であり、マクロファージ内でオートファジーを抑制することを見出した。一方でヒトII型肺胞上皮細胞(A549細胞)内ではPE_PGRS62はラメラ封入体様オルガネラの形成を誘導した。PE_PGRS62の発現により、この細胞内でベシクルが観察された。このベシクルは中性脂肪染色を行って陽性だったため脂質を含んでいることが分かった。また、GFP-PE_PGRS62発現により形成されたベシクルのサイズ直径が0.35~2.59 umであり、GFPを発現した細胞内のベシクルは0.35~1.12 umであった。GFP-PE_PGRS62発現したA549細胞内で直径が1.2 um以上のベシクルは37%であった。脂質を含んだベシクルはマウスII型肺胞上皮細胞(T7細胞)内でもGFP-PE_PGRS62の発現により誘導された。A549細胞およびT7細胞内では、発現量が比較的低い安定的にGFP-PE_PGRS62でベシクル形成が誘導されたが、HeLa細胞やMCF7細胞は安定発現ではベシクル形成が誘導されなかったが、プラスミドトランスフェクションによりGFP-PE_PGRS62を一過発現させた場合には細胞内でベシクル形成が観察された。ATP-binding cassette transporter A3(ABCA3)はII型肺胞上皮細胞におけるサーファクタント代謝に必須なトランスポーターであり、ラメラ封入体のマーカータンパク質であると考えられている。GFP-PE_PGRS62により形成されたベシクルにABCA3は共局在した。したがって、結核菌の病原因子PE_PGRS62がII型肺胞上皮細胞内でラメラ封入体様オルガネラを形成させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していたPE_PGRS62結合タンパク質であるHornerinのノックアウトマウスが、ゲノム編集により比較的短時間で完成した。現在、このノックアウトマウスを使った結核菌感染実験を計画している。結核感受性のマウスであるBALB/c系統を使用して評価すると、一回の実験に100日程度かかることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
計画していたPE_PGRS62結合タンパク質であるHornerinのノックアウトマウスが、ゲノム編集により比較的短時間で完成した。より効率的に研究を実施するために、マウスから肺胞マクロファージを回収し、SV40ラージT抗原の発現させ不死化・細胞株化する。野性株およびHornerinのノックアウトマウス由来の肺胞マクロファージにPE_PGRS62を誘導発現した結核菌を感染させ、Hornerinの機能解析を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
第9回細菌学・若手コロッセウムで発表予定であったが、計画を変更し出席しなかったため、未使用学が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、研究発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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