A型インフルエンザウイルスは8本に分節化されたマイナス鎖RNAをゲノムとして持つ。8本のゲノム分節は規則的な配置を取りウイルス粒子に取り込まれる。このとき重要な役割を持つのが、各ゲノム分節の5’および3’端に存在するパッケージングシグナル配列である。パッケージングシグナル領域を残して、残りの領域をGFP遺伝子と置き換えたPB2分節を持つウイルス(PB2-GFPウイルス)は、細胞内でPB2タンパク質を発現できないため増殖できないが、トランスでPB2タンパク質を供給すれば野生型のウイルスと同じくらい効率良く増殖出来る。8分節のうちのPB2分節を持たないPB2分節欠損7本鎖ウイルス(ΔPB2ウイルス)は、トランスでPB2タンパク質を供給しても、増殖性が非常に悪い。したがってPB2タンパク質だけではなくPB2分節そのものもウイルスの増殖に重要な役割を担っていると考えられるが、その分子機構については明らかになっていない。本年度当初は昨年度に引き続きΔPB2ウイルスの増殖性を高めるNPの変異に注目して実験を行った。しかしΔPB2ウイルスの低増殖性が問題となり共免疫沈降の効率が低く、質量分析できなかった。そこで、HA分節を欠損したΔHAウイルスを用いて解析した。共同研究により、ΔHAウイルスはHA分節を欠損しているにもかかわらず、8本のゲノム分節を取り込んでいることが、電子顕微鏡解析によって明らかになった。そこで次世代シークエンサー・およびノーザンブロッティング等生化学的手法を用いて粒子に取り込んでいるRNAを調べたところ、宿主由来RNAを取り込んでいることが明らかとなった。ゲノムパッケージングにおいては8本のゲノム分節の存在がすることが重要であることが確認される結果となった。
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