研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)の複製ゲノムであるcccDNA(covalently closed circular DNA)は既存の治療法で標的となっていないため、HBV保因者から完全に排除することは未だ困難である。HBVは動物モデルが確立しておらず、培養細胞でのゲノム複製効率は極めて低いため解析が難しい。特にcccDNA生成過程の詳細は明らかとなっていない。本研究では、肝細胞への遺伝子導入効率が特に高いアデノウイルス(Ad)ベクターを用いて培養細胞でのゲノム複製を高効率に検出する系の確立を目指し、本系を用いて我々が既に同定しているcccDNAの生成に失敗する変異体等の変異型HBVゲノムにおけるゲノム複製を詳細に解析することでcccDNA生成に必要なゲノム領域や因子を同定し、cccDNA生成阻害薬への応用を最終目的として研究を行っている。 そのために本研究ではアデノウイルス(Ad)ベクターを用いた新たな高感度HBV複製ゲノム検出系を確立し、本年度論文として報告を行った(Suzuki et al., Sci. Rep., 2017)。この系を用いて複数の変異型HBVゲノムを用いて解析を行うことで今まで複製効率、検出感度が低く詳細が明らかとなっていないcccDNA生成のメカニズムを解明することを想定していたが、本年度は産前、産後及び育児休暇等の取得により研究を行うことが困難となったため、研究費の申請は行わなかった。
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