研究課題/領域番号 |
15K19107
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安東 友美 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (80734227)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / vRNP / 宿主因子 / 核内輸送 / nuclear compartment / nuclear matrix |
研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスのゲノムRNAはウイルス蛋白質PB2、PB1、PAおよびNPとともにvRNPを形成する。vRNPは核内で複製された後、ウイルス蛋白質M1およびNS2とともに核外輸送複合体を形成しCRM1依存的に核外に輸送される。しかし、vRNPが核内のどこで形成され、どのような動態をたどり、核外輸送されるかはほとんど明らかになっていない。本研究では、vRNPを構成する因子であり、かつ核外輸送複合体を形成する際にNS2と相互作用するPB2と相互作用する宿主蛋白質、KIAA0664に着目した。KIAA0664そのものの機能はほとんど明らかになっていないが、我々の研究室で行ったインフルエンザウイルスの増殖に関与する宿主蛋白質の網羅的解析により、ウイルス生活環の後期過程に関与する可能性が示されている。そこでKIAA0664のウイルス増殖における機能を明らかにすることを目的に研究を行った。 KIAA0664の細胞内での局在を解析したところ、KIAA0664は通常細胞質に局在するが、PB2の発現により核質に、M1の発現により核スペックルに局在した。PB2を単独で発現させても核スペックルに局在しないが、PB2とM1を共発現させると、KIAA0664、M1およびPB2が核スペックルで共局在した。KIAA0664の発現を抑制すると、M1の核スペックルへの局在が阻害され、さらにvRNPの核外輸送が阻害された。一方、KIAA0664の発現抑制は、ウイルス蛋白質およびvRNAの発現量には影響せず、またCRM1依存的な核外輸送機構は活性を維持していた。以上の結果から、KIAA0664はvRNPが複製されてから、核外輸送複合体が形成されるまでの核内での動態に関与することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
vRNPが複製されてから、核外輸送複合体が形成されるまでの核内での動態に、宿主蛋白質KIAA0664が関与することを明らかにした。また、vRNPの核内での動態に、核スペックルが重要な役割を果たす可能性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
KIAA0664とPB2, M1および核スペックルの詳細な結合機構を明らかにする。KIAA0664とM1の核スペックルへの局在を抑制するM1の変異体を作製し、vRNPが複製されてから、核スペックルに移行する前のvRNPの核内動態を解析する。また、vRNPが複製されてから、核外輸送複合体が形成されるまでに、核スペックルを経由する意義の解明を目指す。
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