研究課題/領域番号 |
15K19108
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 郷介 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80644989)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウイルス / miRNA / ゴルジ体 |
研究実績の概要 |
HSV-1は核内でウイルスゲノムの複製とカプシドへのゲノムパッケージングを行う。ゲノムを含むカプシドは核膜を通過する際に、核の二重膜の内膜で1次エンベロープを獲得し、外膜と融合してエンベロープを失う。細胞質内で再び2次エンベロープを獲得し、感染性粒子として成熟する。2次エンベロープ形成を阻害するmiR-199a-5とmiR-199a-3pの標的分子を同定するために、2次エンベロープが形成される細胞質内膜の由来を超解像顕微鏡を用いた1粒子イメージングにより同定した。その結果、細胞内の分子輸送系であるゴルジ体のトランス槽であることが強く示唆された。次に、miRNA標的予測アルゴリズムを複数用いて標的候補分子を100種類程度まで絞り込み、この中からゴルジ体の機能に関わる分子をGene ontology termなどからスクリーニングし、20種類程度まで絞り込んだ。この中から、miR-199a-5pとmiR-199a-3pの両者によって抑制を受ける分子を、3'UTRルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて決定し、その中からHSV-1増殖に寄与する分子を同定した。この分子をshRNAによってノックダウンするとHSV-1の2次エンベロープ形成が阻害されることが電子顕微鏡解析から明らかになった。また、この分子の下流の分子の活性を変化させるとHSV-1の2次エンベロープ形成効率が変化することが明らかになり、2次エンベロープ形成に重要な細胞内シグナル系である可能性が示唆された。このシグナル系は、ゴルジ体から出芽する輸送小胞の制御に重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度に実施予定であった標的候補分子のスクリーニングは完了しており、さらに、平成28年度実施予定であった標的分子の同定も完了しているため。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究からゴルジ体の小胞輸送がHSV-1の2次エンベロープ形成に重要であることが明らかになってきたが、どのような機構で2次エンベロープと関連しているか不明であるため、それを明らかにする。そのために、同定した分子のノックダウン細胞やmiR-199a過剰発現細胞において、ゴルジ体の機能がどのような影響を受けているかをHSV-1感染下と非感染下で、超解像顕微鏡や電子顕微鏡をもちいた解析から明らかにし、HSV-1の2次エンベロープ形成の分子機構を明らかにしていく。
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