前年度に絞り込んだmiR-199a-5pおよびmiR-199a-3pの標的候補分子の中から、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の2次エンベロープ形成に関わる宿主因子としてARHGAP21に着目した。この分子は両miRNAの標的であることが3'UTRレポーターアッセイによって明らかになり、この分子をノックダウンすることで2次エンベロープ形成効率が減弱することが電子顕微鏡解析から明らかになった。 ARHGAP21はゴルジ体特異的なCdc42のGTPase activating protein (GAP)であることが明らかとなっており、HSV-1がゴルジ体のトランス槽で2次エンベロープを獲得することとの関連が疑われた。恒常活性化型のCdc42を強制発現させるとHSV-1の2次エンベロープ形成効率が減弱したことから、ARHGAP21によるゴルジ体におけるCdc42の活性制御がHSV-1の2次エンベロープ形成に重要な役割を果たしていることが強く示唆された。また、ゴルジ体のトランス、メディアル、シス各槽の特異的マーカーの発現量をウエスタンブロッティングによって調べると、ARHGAP21ノックダウンやpre-miR-199a強制発現下でHSV-1を感染させたときのみトランスマーカーが特異的に減少していたため、ARHGAP21はHSV-1感染時にゴルジ体のトランス槽を維持することでHSV-1の2次エンベロープに寄与している可能性が明らかになった。
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