ヒトヘルペスウイルス 6B (HHV-6B)はT 細胞に感染し増殖するが、肝細胞においてもウイルス感染は可能である。しかし、その分子レベルのメカニズムは不明である。今回、我々はHHV-6Bの肝細胞への侵入に着目し、その侵入に関与するウイルス糖タンパクおよび宿主因子(レセプター)を同定することを目的とする。それらの同定によってHHV-6B の糖タンパクの機能解析およびHHV-6B の肝細胞への侵入のメカニズムの解明に繋げたいと考えていた。着手後、我々は、HHV-6Bの肝細胞への侵入過程において、ウイルスのリガンドとなりうる糖タンパク複合体であるgH/gL/gO複合体に注目し、研究を行った。具体的には、HHV-6B gH/gL/gO 複合体のうち、gH だけが膜貫通領域を保有している。gH の膜貫通領域およびcytoplasmic 領域をヒト抗体IgG1 のFc 領域に入れ替えたgH を(そのC 末端にHis タグをつける)作製した。 gH 発現ベクターおよびgL、gO ベクターを293T 細胞にtransfection し、分泌型の複合体を培地から回収し、His タグと結合するNI-NTA sepharose を用いて精製した。同様にnegative control としてFc(His タグをC 末端につける)タンパクを作製し、精製する。分泌したHHV-6B gH/gL/gO 複合体がヒト肝細胞と結合するか否かをFACS で調べた。その結果、分泌型の gH/gL/gO 複合体とHHV-6Bが感染する肝細胞との結合が見られなかった。この結果から、 gH/gL/gO 複合体はHHV-6Bの肝細胞への侵入においてウイルスのリガンドではないこと、或いは gH/gL/gO 複合体とHHV-6B感染肝細胞との結合は他の実験条件で調べる必要があることが考えられる。本研究において、分泌型の gH/gL/gO 複合体の作製に成功し、その複合体とヒト肝細胞との結合を調べた。得られたデータは、HHV-6Bの gH/gL/gO 複合体の機能解析にはもちろん、HHV-6Bの肝細胞への侵入メカニズムの解明に役立つと考えられる。
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