研究課題
近年、腫瘍ならびにウイルス感染症において、T細胞誘導型の治療ならびに予防ワクチンの開発が進められている。しかしながら、どのようなT細胞応答を誘導すれば有効であるのか、その分子機序は明らかではない。本研究ではウイルスの感染防御に関わるT細胞応答の特性を明らかにすることで、機能的な抗ウイルスT細胞免疫応答を誘導する分子基盤の確立を目的とした。さらに、これらを基にして、T細胞の抗原認識に重要なアミノ酸を置換した改変ペプチドを用いて、機能的な抗ウイルスT細胞免疫応答が誘導出来るか検討を行なった。我々はマウスレトロウイルスであるフレンドウイルス感染におけるCD4陽性T細胞応答をモデルとして検証を行った。これまで同定した複数のCD4エピトープの内、i18エピトープは唯一回の免疫操作でフレンドウイルス感染に対し強い抵抗性を示したが、fnエピトープでは50%しか抵抗性を示さなかった。強い感染防御能を与えるi18ペプチドは、fnペプチドに比べて、ウイルス感染後、早期に機能的な抗原特異的CD4陽性T細胞を誘導することが明らかになった。次に感染防御能が弱いfnペプチドに着目し、改変ペプチドを用いて機能的なT細胞応答を誘導出来るか検討を行った。fnペプチドの一部をアラニンならびに非天然アミノ酸に置換した改変ペプチドは野生型に比べて強く認識された。しかしながら、それらを免疫したマウス個体におけるウイルス感染後の生存率には有意な上昇は認められなかった。このことは、誘導されるT細胞応答は野生型の抗原によって規定されている可能性が示唆された。本研究により、抗ウイルスT細胞応答は野生型抗原によって規定されている可能性が明らかになった。このことは、適切な抗原の選択することがウイルス感染に対するワクチンを考える上で重要であること示唆しており、合理的なT細胞誘導型のワクチン開発に繋がると期待される。
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The Journal of Experimental Medicine
巻: 213 ページ: 3057-3073
10.1084/jem.20160938