研究課題
CTL依存的SIV複製制御アカゲザルは体内のLatent Reservoirが常に低レベルの増殖を許容しており、CTL逃避変異の蓄積が進行していると考えられる。プロウイルスゲノムの高感度検出により全プロウイルス中のCTL逃避変異を含むプロウイルスの微小集団の比率と変異の性状を明らかにし、体内でのCTL逃避変異選択の進行が最も進んだ分画をLatent Reservoirと評価できると考えられる。平成28年度においてはSIV複製制御アカゲザルの各種組織よりえられた検体を用いてSIVプロウイルスゲノムの増幅を行い、CTL逃避変異体の蓄積の解析によりLatent Reservoirの同定を試みた。直腸、リンパ節および末梢血のCD4陽性細胞分画のプロウイルス解析の結果、ある個体では末梢血のCD4陽性細胞分画ではCTL逃避変異の蓄積が少なかったが、これに対し直腸およびリンパ節でのCTL逃避変異は多くみられた。また別の個体ではいずれの組織からも急性期にインテグレーションされたと思われるwild typeのプロウイルスゲノムのみが得られ、CTL逃避変異が選択されたプロウイルスゲノムは検出されなかった。平成28年度の研究結果からはCTL依存的なSIV複製制御個体のLatent Reservoirの同定には至らなかった。現在、Tfh細胞、CD4陽性メモリー幹細胞、CD34陽性多機能造血幹細胞といった、より詳細な細胞分画について、プロウイルスの性状を解析中である。
3: やや遅れている
平成28年度の研究結果からはCTL依存的なSIV複製制御個体のLatent Reservoirの同定には至らなかった。体内におけるCTL逃避変異体の存在頻度が極めて少ない個体では、プロウイルスゲノムのPCR法による直接的な検出は難しい可能性がある。いっぽうでプロウイルス量が比較的多い個体からはCTL逃避変異の選択されたプロウイルスが検出されており、より詳細な解析を行う。
SIV複製制御アカゲザルの各組織よりTfh細胞、CD4陽性メモリー幹細胞、CD34陽性多機能造血幹細胞といった、より詳細な細胞分画をSortingし、プロウイルスの性状を解析することでCTL依存的なSIV複製制御個体のLatent Reservoirの同定を試みる。同時にプロウイルスゲノムよりもコピー数が多いと予想される細胞内ウイルスRNAの解析を行う、細胞内におけるウイルスRNAは複製能のあるプロウイルスからしか転写されないため、複製能のあるプロウイルスの動態つまりLatent Reservoirの解析に寄与すると考えられる。また、複製制御個体の各組織におけるSIV特異的なCTLの動態の解析を行うことでLatent Reservoirの性状との関連性を明らかにする。CTLは抗原刺激のある体内の部位つまりLatent Reservoir となる組織分画に集簇すると想定されるため、CTLの体内動態を観測することでLatent Reservoir の存在を間接的に示せる可能性がある。
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