本研究では、1型IFNで誘導される非コードRNA (lncRNA)を同定し、lncRNAがその下流のシグナル伝達にどのような役割を果たすかを解明することを目的とした。 肝臓細胞株に1型IFN処理をし、それによって発現変動するlncRNAを7種類同定した。同定したすべてのlncRNAを個々にノックダウンし、1型IFNの効果を評価した。その結果、lncRNA#32が1型IFNシグナルに関係することを発見した。lncRNA#32は1型IFNによって誘導される種々のISGの誘導を制御していることがわかった。さらにlncRNA#32と結合するタンパク質を同定した結果、lncRNA#32はhnRNPUおよびATF2と結合することを発見した。hnRNPUはlncRNA#32と結合し、lncRNA#32の安定化に寄与していることが分かった。またATF2はlncRNA#32と結合し、種々のISGのプロモーター領域に結合していることがわかった。 本研究で同定したlncRNA#32がウイルス感染防御に関与しているかを評価した。肝臓細胞内のlncRNA#32をノックダウンし、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)を感染させた結果、HBVおよびHCV複製は著しく増加した。さらにこのlncRNA#32を肝臓細胞に強制発現させた結果、HBVおよびHCV複製は著しく減少した。これらの結果より、lncRNA#32はISG発現を誘導することにより、HBVやHCVなどのウイルス感染防御に関与していることが分かった。 lncRNA#32を誘導することにより、従来のIFN療法をより強力にすることが期待される。
|