これまで胸腺上皮細胞のコロニー形成能が加齢に伴い低下すること、一方でT細胞の発生がダブルネガティブ3(DN3)で停止するRag2-/-マウスでは加齢におけるコロニー形成能の低下が非常に緩やかであり、成体期でもコロニー形成能が高く維持されていることを明らかにしてきた。 本年度は、DN3以降のT細胞集団のうち、胸腺上皮細胞のコロニー活性に影響を与え得るT細胞分画を同定するため、Rag2-/-マウスに加え、T細胞の発生がダブルポジティブ(DP)で停止するTCRa-/-マウス、さらにはCD4シングルポジティブ(SP)またはCD8 SP細胞が発生しない変異マウスを用いて胸腺上皮細胞のコロニー形成能を検討した。その結果、TCRa-/-マウスではRag2-/-マウスほど顕著ではないが、野生型マウスに比べコロニー形成能が増加し、4週齢以降も大きなサイズのコロニーが認められた。上記の変異マウスの結果を合わせると、コロニー形成能に影響を与え得る主なT細胞はDP細胞であり、SP(主にCD8 SP)細胞も一部影響を与え得ることがわかった。これらの結果は、Rag2-/-マウスへ野生型、TCRa-/-、Rag2-/-マウスの骨髄細胞を移植し、同一の胸腺微小環境下に異なるT細胞分化異常を示す胸腺を作り出す系においても、DPおよびSPによる影響が上述の結果と同程度認められた。 一方で、コロニー培養系をさらに改良したことにより、成体期の胸腺上皮細胞を各分画にソートした後に、そのコロニー形成能を検討することが可能となった。また、この培養系ではコロニーの継代効率が従来よりもはるかに高くなった。
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