研究課題/領域番号 |
15K19126
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中濱 泰祐 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特別研究員(PD) (10636187)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | RNA編集 / 自己免疫疾患 |
研究実績の概要 |
関節リウマチや多発性硬化症などの自己免疫疾患の発症にはヘルパーT(Th)細胞の一種であるTh17細胞が深く関わっていることが知られている。申請者は、未分化T細胞にTh17細胞分化誘導刺激を加えることにより、ADAR2の発現が上昇することを発見した。ADAR2は二本鎖RNA中のアデノシンをイノシンへと置換するRNA編集酵素であるが、Th17細胞分化における機能は不明であった。このため、平成27年度は以下の2つの研究計画を実施した。
1. 「各Th細胞サブセットにおけるADAR2発現レベルの解析」Th17細胞に加え、Th1、Th2細胞への分化誘導時におけるADAR2の発現レベルを調べたところ、Th17細胞分化刺激特異的に数倍程度の発現上昇が認められた。一方で、未分化T細胞を抗CD3/CD28抗体で刺激すると、はるかに強くADAR2の発現上昇が認められたため、ADAR2がT細胞活性化において何らかの役割を担っていると考えられた。
2. 「T細胞特異的ADAR2欠損マウスの表現型解析」Lck-creトランスジェニックマウスとADAR2 floxマウスを交配させ、T細胞特異的にADAR2を欠損するマウスを作製した。胸腺におけるT細胞分化は、野生型と比べ、ほとんど正常であった。一方で、脾臓におけるT細胞分画を調べたところ、ナイーブT細胞比率が低く、エフェクター/メモリーT細胞比率が高いことが明らかとなった。加えて、脾臓中のTh1細胞、Th17細胞数が野生型マウスと比べて有意に高く、T細胞におけるADAR2が抗炎症作用を有していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、T細胞におけるADAR2の発現誘導条件について解析した。その結果、抗CD3/CD28抗体刺激によってADAR2の発現が著しく上昇することを明らかにした。さらに、T細胞特異的にADAR2を欠損するマウスを用いた解析により、同マウスでは炎症様の表現型を示すことを見出した。以上から、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はin vitro解析を中心に、以下の2つの計画を実施する。
1. 「TCR活性化におけるADAR2の役割の解明」T細胞特異的ADAR2欠損マウス由来の未分化T細胞を単離し、抗CD3/CD28抗体で刺激し、増殖やIL-2産生などについて、野生型との差異の有無について調べる。加えて、ADAR2欠損未分化T細胞が、Th17細胞など、各ヘルパーT細胞へと正常に分化誘導できるかどうかについても検証する予定である。
2. 「RNA編集活性の必要性の検証」1.で明らかになったADAR2の機能について、RNA編集活性が必要であるかどうかを検討する。すなわち、ADAR2欠損未分化T細胞に、野生型あるいは変異型ADAR2(RNA編集活性を持たない)を導入し、野生型を導入した場合においてのみ、正常化するかどうかを検証する。以上から、ADAR2のRNA編集活性の必要性を決定する。
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