研究実績の概要 |
本年度は、①CD8aaIELの数の調節においてNotchシグナル伝達に必要なリガンドとその供給細胞についてと、②Notchシグナルの欠損によるAtp8a2の発現低下がどのようにしてCD8aaIEL数の減少につながっているのかを調べた。 ①のリガンド供給細胞については、IELの局在から、上皮細胞と樹状細胞・マクロファージを候補として考え、Villin1-CreとCD11c-Cre特異的なDll1, Jag1の単独及び両方の欠損マウスを解析したが、いずれもCD8aaIELの数に変化は認められなかった。責任リガンドについては解析途中であるため、マウスの交配を継続し、解析する予定である。 ②については、Notchシグナルが欠損したIELでは、Atp8a2の発現低下によってPSが細胞膜外膜に偏向し、細胞膜外膜上のPSによる”eat me”シグナルによって貪食細胞に捕食され、数が減少していると想定した。腸管マクロファージによるIELの捕食を調べるために、コロニー刺激因子(CSF1)受容体に対する抗体をRbpj-4KOマウスに投与し、腸管マクロファージをマウスから除いたところ、IELの減少はコントロール抗体を投与したRbpj-4KOと比較して、コントロールマウスと同程度まで回復した。この結果から、マクロファージによる貪食がRFF-4KOでのIELの減少と関連していることが示唆された。また、貪食細胞としては上皮細胞も候補の細胞であったが、抗体投与での回復の程度から、主要なIELの貪食細胞はマクロファージであると考えられた。以上のことから、NotchシグナルはAtp8a2の調節による細胞膜リン脂質の恒常性維持と貪食細胞の働きを介して、CD8aaIELの数の制御に寄与していることが明らかになった。
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