研究課題/領域番号 |
15K19132
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岡崎 一美 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 准教授 (50452339)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 単一細胞発現解析 |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまでに、免疫抑制性受容体LAG-3が自己免疫寛容の成立維持に必須の役割を果たすことを明らかとしてきたが、LAG-3が実際にどのような細胞集団のどのような機能を制御することによって自己免疫疾患の発症を制御しているのかは不明である。そこで本研究では、多検体単一細胞半網羅的発現解析によってLAG-3陽性細胞の中に含まれる機能的細胞集団を分類して解析することを計画した。また、同様の手法用いて、高親和性抗体の産生において中心的な役割を果たす濾胞ヘルパーT細胞の多様性を理解し、その機能を解析することを目的とする。 今年度は、LAG-3陽性細胞及び濾胞ヘルパーT細胞について、多検体単一細胞半網羅的発現解析を行った。具体的には、免疫の有無、PD-1欠損等の様々な条件のマウスからLAG-3陽性細胞をセルソーターにて分取し、母集団とした。また、B細胞による長期抗体産生応答を誘導する濾胞ヘルパーT細胞が濃縮されていると考えられているCXCR5hiPD-1hiCD4 T細胞をセルソーターにて分取し、母集団とした。次に、母集団に発現している遺伝子をマイクロアレイ解析にて同定し、その中から、母集団に含まれる亜集団の定義付けに有用と思われる遺伝子を192種類選定した。次に、母集団から96個の単一細胞を得て、上述の192遺伝子について遺伝子発現解析を行った。各遺伝子の発現パターンをもとに階層的クラスタリング解析を行って個々の細胞を亜集団に分類し、各亜集団を規定する候補遺伝子を同定した。濾胞ヘルパーT細胞については、これまでに存在が指摘されている濾胞制御性T細胞を明確に同定することができるとともに、複数の亜集団に分類することができた。LAG-3発現細胞については、特徴的な亜集団が複数同定され、自己免疫疾患の発症と関連して各亜集団の増減が確認された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画は、様々な条件下においてLAG-3陽性細胞及び濾胞ヘルパーT細胞について多検体単一細胞半網羅的発現解析を実行し、これらの細胞集団に含まれる細胞亜集団を分類することであったが、実際に多検体単一細胞半網羅的発現解析を実行し、細胞亜集団の分類を行った。当初は96遺伝子を用いて解析を行う予定であったが、192遺伝子に増やして解析を行うことができたため、より詳細かつ十分な結果を得ることができた。さらに、自己免疫疾患の発症と関連して各亜集団の増減が確認されたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに多検体単一細胞半網羅的発現解析を行い、階層的クラスタリング解析によってLAG-3陽性細胞集団及び濾胞ヘルパーT細胞集団を亜集団に分類することができた。しかし、各細胞集団には多様な亜集団が含まれていたため、少数の遺伝子の違いに影響を受けやすい単純な階層的クラスタリング解析を元に特定の亜集団を解析するのでは不十分で、本質を見落とす可能性が懸念された。そこで、より多角的にノンバイアスな解析を行って、細胞亜集団をより正確に解析することが重要と思われた。単一細胞の発現解析については、絶対的な解析手法が確立されていないことから、各種統計学的手法を選択して独自に組み合わせることにより、有用な解析手法を確立する必要があると思われた。そこで、今年度は、各種統計学的手法を用いて、昨年度に行った多検体単一細胞半網羅的発現解析の結果を解析し、各細胞亜集団を規定する候補遺伝子の絞り込みを行う。さらに、LAG-3陽性細胞集団については、亜急性のI型糖尿病を発症するNOD-LAG-3欠損マウス及び致死性の心筋炎を発症するBALB/c-PD-1・LAG-3二重欠損マウスにおいて、新規に同定した細胞集団の質的及び量的な変化を解析するとともに、自己免疫疾患の発症における関与を解析する。特に、当該細胞集団による機能が、LAG-3に依存している可能性に留意して、慎重に解析する。濾胞ヘルパーT細胞についても、LAG-3陽性細胞の解析と同様に統計学的解析を行い、各細胞亜集団を規定する候補遺伝子の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、平成27年度に多検体単一細胞半網羅的発現解析の結果を元に分類した細胞亜集団について、抗体を用いて遺伝子欠損マウス内での分布等を解析する予定であったが、先に統計学的手法を用いた解析を行う必要性が生じ、当該解析を次年度に行うこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
各種統計学的手法を用いて、昨年度に行った多検体単一細胞半網羅的発現解析の結果を解析し、各細胞亜集団を規定する候補遺伝子の絞り込みを行った上で、抗体を用いて遺伝子欠損マウス内での各細胞亜集団の分布等の解析を行うこととする。
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