本研究では、免疫抑制性受容体LAG-3がどのような細胞集団のどのような機能を制御することによって自己免疫疾患の発症を制御しているのかを明らかにする目的で、多検体単一細胞半網羅的発現解析によってLAG-3陽性細胞の中に含まれる機能的細胞集団を分類して解析することを計画した。また、同様の手法用いて、高親和性抗体の産生において中心的な役割を果たす濾胞ヘルパーT細胞の多様性を理解し、その機能を解析することを目的とする。 これまでに、多検体単一細胞半網羅的発現解析を行い、階層的クラスタリング解析によってLAG-3陽性細胞集団及び濾胞ヘルパーT細胞集団を亜集団に分類した。濾胞ヘルパーT細胞については、これまでに存在が指摘されている濾胞制御性T細胞を明確に同定することができるとともに、複数の亜集団が存在することが明らかとなった。LAG-3発現細胞については、特徴的な亜集団が複数同定され、自己免疫疾患の発症と関連して各亜集団の増減が確認された。しかし、各細胞集団には多様な亜集団が含まれていたため、階層的クラスタリング解析のみを元に特定の亜集団を解析するのでは不十分で、本質を見落とす可能性が懸念された。また、単一細胞の発現解析については、絶対的な解析手法が確立されていない。そこで今年度は、PCA、t-SNE、ANOVA等、各種統計学的手法を用いて、昨年度に行った多検体単一細胞半網羅的発現解析の結果をより多角的にノンバイアスに解析し、注目すべき細胞亜集団および各細胞亜集団を規定する候補遺伝子の絞り込みを行った。また、各亜集団の分化および機能に関連すると思われる遺伝子について、亜集団間での発現量を比較し、各亜集団の機能を評価した。本研究により、LAG-3陽性細胞集団について、自己免疫疾患の発症に関与する可能性のある細胞亜集団を同定することができた。
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