研究課題
本研究課題は、腫瘍抑制因子Meninの細胞内エネルギー代謝およびT細胞老化における役割の解明を目的としている。申請者はこれまでに、Meninを欠損したCD8 T細胞では、抗原刺激後の早期にT細胞老化の形質を示すこと、細胞内エネルギー代謝(グルタミン代謝、嫌気的解糖)が野生型に比べ過剰に亢進していることを見出してきた。平成28年度はMeninによる細胞内エネルギー代謝制御機構の解析をおこない、抗原刺激時にAkt/mTORC1シグナル経路が過剰に活性化することが一因となっていることを明らかにした。さらに、mTORC1シグナル経路を阻害することで、グルタミン代謝関連酵素や解糖系関連酵素の発現が低下するとともに、Meninの欠損により誘導されるT細胞老化の形質が部分的に回復することを見出した。これに加え、抗原刺激時に培養液中のグルタミン量を制限することやグルタミン代謝阻害剤で処理することで、Menin欠損CD8 T細胞で認められるT細胞老化の形質は部分的に回復した。以上の結果から、MeninはAkt/mTORC1シグナル経路の活性化に作用することで、細胞内エネルギー代謝を調節し、CD8 T細胞老化を制御することが明らかとなった。本申請研究により、細胞内エネルギー代謝とT細胞老化におけるMeninの役割の理解とともに、細胞内エネルギー代謝調節によるT細胞老化の制御機構の存在を明らかにした。現在、これらの成果をまとめ、論文投稿準備中である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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