研究実績の概要 |
本研究課題では自己免疫疾患におけるpDCsの役割を解明することを目的として、これまでに炎症反応におけるpDCsの重要な役割、さらにマウス尋常性乾癬モデルを用いて皮膚慢性炎症の惹起、遷延化とそれに続く自己免疫病態の形成におけるpDCs の役割とそのSiglec-H を介する制御機構を明らかにした。本年度はマウス全身性エリテマトーデスモデルであるpristan誘導性ループス様腎炎を用いて、病態の形成における pDCs の Siglec-H を介した制御機構の解明を試みた。 1.血清中サイトカイン、抗核抗体量を測定した結果、Siglec-H欠損マウスでは野生型マウスに比べてIL-6, IL-12p40, CCL2などの炎症性サイトカインやケモカイン、さらにanti-snRNPやanti-Smなどの抗核抗体の産生が亢進していたが、pDCs特異的消失マウスでは減弱していた。 2.腎臓組織の病理解析を行なった結果、Siglec-H欠損マウスでは野生型マウスに比べて病態スコアならびに糸球体への免疫複合体の沈着が亢進していたが、pDCs特異的消失マウスでは減弱していた。 3.腹腔における免疫細胞構成の解析を行った結果、Siglec-H欠損マウスでは野生型マウスに比べて腹腔内への炎症性単球の集積が亢進していたが、pDCs特異的消失マウスでは減弱していた。さらに、それらの炎症性単球の遺伝子発現解析を行なった結果、Siglec-H欠損マウスでは野生型マウスに比べてI型イターフェロンの発現が亢進していたが、pDCs特異的消失マウスでは減弱していた。 以上の結果から、pDCs はループス様腎炎の発症・増悪に関与し、Siglec-HはpDCsの機能を負に調節することによりその病態を制御することが明らかとなった。
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