研究課題/領域番号 |
15K19139
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
福岡 あゆみ 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (30709754)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アレルギー性鼻炎 / 鼻粘膜上皮細胞 / 微小粒子状物質 |
研究実績の概要 |
大気汚染物質である微小粒子状物質(Particulate Matter;PM2.5)は、アレルギー性鼻炎の症状を悪化させることが懸念されている。しかし、実際にPM2.5がアレルギー性鼻炎の増悪に関与するのか、またどのようなメカニズムでアレルギー性鼻炎を増悪させるのかは不明である。 平成27年度は、PM2.5がアレルギー性鼻炎の増悪因子であるかを解析するために、ブタクサ花粉特異的アレルギー性鼻炎モデルマウスにブタクサ花粉とPM2.5の構成成分であるディーゼル排気微粒子(Diesel Exhaust Particles;DEP)を点鼻する実験を行った。その結果、ブタクサ花粉とDEPを点鼻したマウスでは、ブタクサ花粉単独の点鼻時と比較しくしゃみ回数が顕著に増加した。また、ブタクサ花粉点鼻前にDEPをあらかじめ点鼻した場合でも同様にくしゃみ回数の増加が観察された。鼻粘膜上皮細胞の解析からDEP点鼻後、上皮細胞のバリア機能に重要なタイトジャンクションが破壊されていることが明らかとなった。さらに、DEPの点鼻時にROSスカベンジャーを同時に点鼻した結果、タイトジャンクションの破壊とくしゃみ回数の増加が抑制された。これらの結果から、DEPはROSを介して鼻粘膜上皮細胞のバリア機能を破壊することにより、アレルギー性鼻炎の増悪に働くことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、平成27年度はアレルギー性鼻炎モデルマウスに抗原とDEPを点鼻投与する実験を構築し、DEPがあらかじめ鼻粘膜に侵入することによりアレルギー性鼻炎の増悪が誘導されることを示した。また、ROSスカベンジャーを用いた実験から、DEPがROS産生を介して鼻粘膜上皮細胞間のタイトジャンクションを破壊することが、アレルギー性鼻炎の増悪に重要であることを明らかにした。これらの研究成果はClinical&Experimental Allergy誌に掲載された。以上のことから本研究は予定通り順調に進行していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、ノックアウトマウスを用いて鼻粘膜上皮細胞が産生するIL-33等のサイトカインがDEPによるアレルギー性鼻炎の増悪に関与するかを検討する。また、DEPの点鼻により鼻粘膜で発現誘導または上昇する遺伝子を探索し、アレルギー性鼻炎の増悪に関与する遺伝子を明らかにする。
|