ケモカインのひとつであるTARCは、アレルギー炎症反応に関与する。これまでの研究において、TARCのレセプターとしてCCR4が唯一同定されている。最近、申請者はCCR4を発現していないにもかかわらず、TARCが細胞表面に結合する細胞株を見出した。この細胞株は未知のTARCレセプターを発現する可能性が高い。そこで、本研究では、独自に見出した細胞株から、新規のTARCレセプターを同定することを目的をして研究を行った。 本年度、独自に見出した細胞株では、TARC添加でシグナル経路が活性化するか検証した。その結果、TARC添加によって細胞内のリン酸化タンパク質が増加した。このことから、この細胞株に未知のTARCシグナル経路が存在することがわかった。またこの結果は、TARCをプローブに用いることで、この独自に見出した細胞株から未知のレセプターを同定できる可能性が高いことを示唆している。 そこでTARCを用いて、改良したTARCレセプターの同定法を確立した。すなわち、TARC-Flag-HAタグタンパク質を細胞株の表面に結合させた後、タンパク質架橋剤で処理することでTARC-Flag-HAタグタンパク質とレセプターの結合を安定化させ、それから細胞抽出液を調整し、Flagタグ及びHAタグを用いた精製を順次行うことで、効率よくTARC-Flag-HAタグタンパク質に結合した未知のレセプターを精製した。この精製産物を電気泳動して確認したところ、少なくとも、3種類のタンパク質を見出すことに成功した。これらのタンパク質について、泳動ゲルから抽出して質量分析を行い、タンパク質の同定を行ったところ、それぞれのタンパク質は細胞表面に局在するタンパク質であることが明らかとなった。現在、これらのタンパク質についてTARCのレセプターであるかを精査している。
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