研究課題
鼻咽頭関連リンパ組織(Nasopharynx-associated lymphoid tissue: NALT)、涙道関連リンパ組織(Tear duct-associated lymphoid tissue: TALT)、パイエル板 (Peyer's patch: PP)に代表される粘膜関連リンパ組織はそれぞれ異なった組織形成プログラムにより発達する。本年度は下記に示す成果を得た。cDNAサブトラクション法によりNALT誘導細胞で発現が高いと認められたInterferon regulatory factor 1 (IRF1)のKOマウスを導入した。組織学的解析とFACS解析により、IRF1 KOマウスのNALT形成が著しく抑制されていることを見いだした。一方、IRF1 KOマウスのTALTやPPの発達に大きな変化は認められなかったため、IRF1はNALT形成に用いられるユニークな分子であると考えられる。さらに、蛍光顕微鏡を用いた免疫組織学的解析により、IRF1 KOマウスのNALT誘導細胞は鼻粘膜に認められたものの、NALT原基には認められなかった。したがって、IRF1はNALT誘導細胞がNALT原基へ集積するために重要な役割を担っていると考えられる。また、NALT誘導細胞とTALT誘導細胞で発現が高かったHMGB1とS100A9に関する実験を遂行した。これら2つの分子に対する共通の受容体としてRAGEが知られていたため、NALT原基とTALT原基におけるRAGEの発現を免疫組織学的解析により観察した。NALT原基、TALT原基周辺の管腔でシグナルが認められたことから、鼻汁や涙液中に含まれる分泌型RAGEを認識した可能性がある。そこで、NALT, TALT形成におけるRAGEの役割解明に向けてRAGE KOマウスを導入し、解析のための準備を整えることができた。
2: おおむね順調に進展している
NALT形成にユニークな分子機構を見いだすことができた。
NALT形成不全を示したIRF1 KOマウスについて、経鼻ワクチンや鼻炎アレルギーを誘導し、その免疫応答を解析することでNALTの呼吸器免疫システムにおける免疫学的意義について情報を得ていく。RAGE KOマウスについて、NALT、TALT形成における役割を解明していく。気管支関連リンパ組織(inducible bronchus-associated lymphoid tissue: iBALT)に代表される三次リンパ組織形成について、組織形成に関連した分子機構の解明と、iBALT発達の免疫学的意義について研究を遂行する。
マウス購入において、希望週齢のマウスを確保できなかったために次年度に解析することにした。
野生型マウスを購入し、リンパ組織原基の組織学的解析を行う。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件) 図書 (2件)
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