研究課題/領域番号 |
15K19145
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
清水 郁夫 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (60716231)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | problem-based learning / ブレンド型学習 / 医学教育 |
研究実績の概要 |
【背景】我が国の医学教育ではPBLの導入に難渋してきた。その理由として、教員主導型教育の文化があるために自己調整型学習が未確立であることが挙げられる。この解決策として、e-ラーニングを併用したブレンド型PBL(bPBL)とすることで自己調整型学習を促し、主体的学習姿勢の確立に寄与できる可能性がある。【方法】申請段階では知識と技能レベルについて細分類して検討する計画としていたが、whole task learningの観点から、一症例の診療過程を通して包括的に扱うこととした。平成27年度S大学の臨床実習で内科をローテートした学生を従来型PBL群とオンライン学習支援システムを用いるbPBL群に分けてそれぞれPBLを実施した。両群に質問紙を配布し、討議への参加、自己調整型学習、自己効力感、主体的参加、チューターの権威について5件法で質問した。さらにbPBL群にはe-ラーニング受容に関する項目を追加質問した。同意を得た学生について、質問紙の回答結果およびテスト成績を解析した。性別、診療科、事前知識(共用試験CBT成績)、自習時間を共変量とした。【結果】従来群24名、bPBL群27名を対象とし、両群の背景に有意差はなかった。回答結果を共分散分析で解析したところ、主体的参加(p=0.029)と自己調整型学習(p=0.047)は有意にbPBL群で向上した。プレテストとポストテストの点数差も有意にbPBL群が向上した(p<0.001)。e-ラーニング受容について重回帰分析を行ったところ、事前知識は負に相関し(p<0.001)、自己調整型学習は正に相関した(p=0.014)。事前知識とe-ラーニング受容の各項目との関係は、有用性が負に相関した(p=0.018)。【考察】bPBLはチューターの権威に関係なく自己調整型学習をもたらした。特に成績下位層にとって、bPBLは有効な方略と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請段階では獲得すべき能力を技能面と知識(解釈・活用)とに分けて検討する予定であったが、当該PBLプログラムを作成する特に用いたインストラクショナルデザインモデルであるFour Component Instructional Designモデルの理念に則り、whole task learningを重視することとした。その結果、症例のプロブレムを通して包括的に能力の獲得状況を検討できるような学習環境を構築できた。また量的検討もサンプル集積が順調であり、統計学的に有意とする結果を得ることもできた。以上より、計画よりも良好に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は量的検討を行って良好な結果を得ることができた。今後は当初の申請計画に盛り込んであった質的検討についても進めていく。また、他の内科系サブスペシャリティにおいてもbPBLプログラムを実践して同様の結果を得られるか検討を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度には量的解析を先行して行い、さらに統計手法として共分散分析を使用したことから、現時点では現有のPCで対応した。質的検討については現在データ収集中であり、フォーカスグループに関連する謝金、テープ起こし等の人件費、物品費が次年度に繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、平成28年度請求額と併せて、謝金・人件費、物品費などとして使用する。 研究計画通り、質問紙の統計解析およびフォーカスグループインタビューに基づく質的な解析を進めていく。複数名の学生および教員へインタビュー実施するために謝金が必要である。音源を録音し編集するためにテープレコーダーやPC等の物品が、テープ起こしを専門業者に外注し逐語録化するために人件費がそれぞれ発生する。得られた逐語録を継続比較によって解析する。これらの解析によって得られた結果を学会発表し、論文化を目指していく。
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