研究課題/領域番号 |
15K19148
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 美香 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (60555259)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 再生医療 / 臨床研究 / 信頼 / 意識調査 / 細胞提供者 |
研究実績の概要 |
本研究は、新たな倫理的・社会的な問題が存在する再生医療や幹細胞研究の分野において、社会の信頼を得ながら実施するための体制構築には何が必要かを明らかにし、取るべき方策について検討し、提案することを目的としている。 幹細胞研究に用いるES/iPS細胞は、自己増殖能と多分化能を有することから、長期間に渡り半永久的に、様々な目的で使用される可能性がある。さらに、使用目的は、学術に限らず、営利目的も含まれ、また使用者は国内のみならず、海外にも及ぶ。このような特徴を有するES/iPS細胞は、「細胞バンク」で保管または寄託され、バンクは、幹細胞の収集・保管・分配の管理・運営を担う。 ヒト試料のバンクの成功のカギを握るのは、提供者を含む市民と研究者との間の信頼関係の構築にあると言われて久しい。信頼関係の構築のためには、提供者からの十分な情報提供に基づく自発的な同意が重視されてきたが、そのような個人レベルの同意には限界があることも指摘され、これに代わるものとして、信頼関係に基づくガバナンスの構築の重要性が提唱され、信頼関係に基づくガバナンス体制を構築する際には、様々なステークホルダーの立場や価値を認識し、パブリック・エンゲイジメントを通じて、社会的な価値を共有する必要があると言われる。 しかしながら、日本において、ES/iPS細胞の研究のガバナンス体制構築に資する価値共有を目的にステークホルダーの立場や価値を調査した事例はほとんどない。そこで本研究では、ステークホルダーの中でも、多能性幹細胞のもととなる細胞を提供する可能性のある者を対象に、どのような期待や懸念を有するかについて意識調査を実施する。 研究2年目となる平成28年度は、昨年度立案した研究計画について、京都大学における研究倫理審査の承認と、協力医療機関における実施手続きを経て、意識調査を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画時に予定していた意識調査が開始できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は、実施中の意識調査から得られたデータを分析し、必要な要素を抽出するとともに、具体的に取るべき方策について検討し、提案することを目指す。検討した内容は、論文としてまとめ、国際誌への投稿につなげるとともに、国内外関連学会等で発表する。また、提案する内容を実践するために必要な方策についても具体化し、研究実施体制・支援体制に資する活動を視野に入れて取組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
意識調査の実施には至ったものの、予定していた備品や旅費等が発生しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には意識調査の本格的な分析を予定しており、分析に関する必要な経費として使用するとともに、論文投稿、学会発表等にも経費・旅費等として使用する予定である。
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