本研究課題では、個人の全ゲノム情報を大規模に取り扱うパーソナルゲノム時代において、試料や情報を提供する研究協力者の積極的な研究関与のあり方について研究することを目的としている。具体的には、研究協力者への「インフォームド・コンセント」や「解析結果の開示」等における情報通信技術(ICT)の適用可能性に焦点を当てている。 平成30年度は、「インフォームド・コンセント」や「解析結果の開示」といった枠組みとの関連で「データシェアリング」について深掘りした。研究者が中核を担うデータシェアリングにおいて研究協力者の意向をどのように反映していくかは重要な論点となる。今後のデータシェアリングのあり方を検討する目的において、倫理的・法的規制の現状を視野に入れつつ一般市民のゲノム情報への認識やその取扱いへの意向等に関して研究を推進した。具体的には、EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation: GDPR)や改正個人情報保護法、行政指針(ゲノム指針・医学系指針)等における倫理的・法的・社会的課題について明示化したほか、英国における先駆的事例を中心にゲノム情報の取り扱いをめぐる一般市民の認識・意向の抽出のあり方を検討した。成果の一部は、学会等で発表(招待講演を含む)するとともに論文や論考としてとりまとめた。昨今、ゲノム情報の社会的重要性が増しているところであり、このような知見は今後のゲノム研究やゲノム医療のあり方に新たな示唆を与えるものと推察する。
|