幕末の蘭方医で、コレラ等の感染症対策に尽力した緒方洪庵の関連資料を文理双方の観点から調査・解析することで、洪庵の治療戦略について検証した。大阪大学所蔵生薬標本類の詳細を調査し、歴史背景や生薬学的意義について明らかにしたうえで、非侵襲的手法での比較標本として利用するとともに、近世の医療文献の悉皆調査結果から大阪大学所蔵の洪庵の壮年期使用の薬箱内容生薬の基原等について考察した。さらに、統計学的手法で蒐集した情報を解析することで、洪庵が伝統的な漢方と当時最新の蘭方双方を駆使した治療を行っていたことを視覚的に示した。また、薬箱内容生薬の劣化状況から、薬箱を含む医療文化財の保存・継承の方策を検討した。
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