研究実績の概要 |
現在、日本人の4割近くが何らかの傷病で通院しており、70歳以上の通院率は7割にも上っている。通院目的の多くは生活習慣病をはじめとする慢性疾患の治療であることから、長期的に患者の健康問題をマネジメントするためのコミュニケーションスキルは、医師にとって重要なスキルといえる。医療コミュニケーションの教育手法として有用な模擬患者(Simulated Patient, SP)参加型のシミュレーション教育では、従来、単発の診療場面が扱われており、継続的な診療場面でのコミュニケーションスキルが学修できないという欠点がある。 以上の背景から、本研究は、継続診療のコミュニケーションスキルを学ぶSP参加型教育プログラムを開発することを目的として開始した。 平成29年度までに、「診療の継続性(Continuity of care)」の概念整理を行い、継続診療に求められる医師のコンピテンシーについてのインタビュー調査を開始した。先行研究から「診療の継続性」は、①家族などの近親者とのつながり、②同一の医療者による長期的診療、③他職種・他診療科との情報共有、④情報の時間的連続性、⑤地域の保健医療福祉機関との連携、⑥同一の地域・機関における長期的診療、の6つの側面を持つと整理された。 平成30年度は、継続してインタビュー調査を実施した。臨床経験年数5年以上の内科医師を対象にインタビューガイドを用いた半構造化面接を実施し、継続診療を実践する上で医師がどのようなコンピテンシーを身につける必要があるかについて、実践経験に基づいた考えを聴取した。
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