研究課題/領域番号 |
15K19162
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
酒井 良子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30631981)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薬剤疫学 / 関節リウマチ / 合併症 / 安全性 / 生物学的製剤 / 保険データベース / レジストリ |
研究実績の概要 |
1.保険データベースを用いて最長10年間におけるRA患者と非RA患者で脳心血管疾患、骨折の頻度を比較し、非RAに対するRAの各合併症のリスクを明らかにした。対象患者は、RAの診断が1度以上付与され、抗リウマチ薬が一度以上処方された症例をRA群とし(6,712名)、RAの診断が一度も付与されなかった症例のうち年齢と性別、観察期間でマッチングし、5例ランダム抽出した症例を非RA群とした(33,560名)。脳心血管疾患および骨折の罹患率比(RA群vs.非RA群)はそれぞれ1.6[1.3-2.0]、3.4 [2.8-4.0]であり、RA群の方が非RA群と比較して有意に罹患率が高かった。背景因子で調整したハザード比は、脳心血管疾患では1.5 [1.2-1.9]、骨折では1.8 [1.5-2.3]といずれもRAは有意にリスクを高めることが明らかになった。 2.REALデータベースを用いて、最長3年間の帯状疱疹(HZ)の罹患率およびリスク因子を明らかにした。解析対象症例はREALのフォローアップデータが得られ、一度でも生物学的製剤または従来型合成抗リウマチ薬(csDMARDs)を投与された患者1987名とした。HZの罹患率は、6.6(4.9-8.8)/1000患者年であった。次に抗リウマチ薬のHZのリスクを詳細に検討するために、HZが発生した患者をケース(43名)および性別と観察開始年でマッチングし1:5の比率で無作為抽出した患者コントロール(215名)において条件付きロジスティック回帰分析を用いて、csDMARDsに対する生物学的製剤の調整済みオッズ比[95%信頼区間]を算出した。その結果、インフリキシマブ・アダリムマブ使用(4.3 [1.4-12.9] )およびエタネルセプト使用(5.5[2.0-15.1] )の調整済みオッズ比は有意な増加を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保健データベースを用いた解析は、検討する合併症(脳心血管疾患、感染症、骨折)のうち、感染症以外の合併症について予定していた解析を終了した。REALデータベースを用いた解析は予定していた全ての解析を終了した。したがって、本研究課題は総合的には概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.保険データベースを用いた解析においては、RA患者と非RA患者で感染症全体および帯状疱疹のリスクに関して詳細な解析を実施する。帯状疱疹の解析においては、RA群と非RA群のリスクの比較に加えて、RA群における抗リウマチ薬と帯状疱疹発症との関連性についてネスティッドケースコントロールスタディを実施する。HZ発症例(ケース)1人に対しリスク集団から年齢と性別をマッチングさせた5名(コントロール)を抽出する。HZ発症時または発症直前の抗リウマチ薬とHZ発症の関連を条件付ロジスティック回帰分析を用いて算出する。 2.CORRECTデータベースを用いて、安定してデータベースを運用し、患者登録を進め、分子標的薬の安全性および有効性を解析する。本データベースへの患者登録の推進とデータベースの充実化を徹底し、重篤な有害事象のないようおよび頻度を比較する。また、有効性に関しても患者の身体機能評価の指標も含めて比較検討する。 3.新たに市販される生物学的製剤・分子標的治療薬の有害事象解析として、前臨床試験・治験で予測されなかった重要な有害事象が発現した場合には、臨床的解析、遺伝子解析などを目的とした症例集積研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
保険データベースを用いた研究において平成27年度中に一部の解析が完了せず、年度内の支払いが間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
保険データベースを用いた、関節リウマチ(RA)患者と非RA患者で感染症のリスクの比較研究および帯状疱疹のリスクに関する研究における統計解析の費用および欧州リウマチ学会発表のための旅費等として使用する予定である。
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