研究課題/領域番号 |
15K19166
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
秋好 健志 慶應義塾大学, 薬学部, 助教 (50399143)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 消化管障害 / 抗がん剤 / 消化管吸収 |
研究実績の概要 |
現在までにラットにおいて 5-FU により消化管障害を誘発し、この時の薬物吸収過程に関わる消化管 P-gp および Pept1 の発現量の変化を明らかにした。 具体的にはラットに 5-FU を 5 日間経口投与することで消化管障害ラットを作出した。また、このとき5-FU 投与ラットでは食餌量、便量、体重が日を追うごとに減少していくことを確認した。さらに、6 日目にラットの小腸各部位 Upper, Middle, Lower を摘出し、上皮粘膜組織を使用し、p-gp および pept1 の mRNA 発現量をリアルタイム PCR 法により、また、タンパク発現量は western blotting 法により定量した。さらに、脱糖鎖処理を施し、糖鎖修飾の変化についても検討した。Upper では糖鎖付加が亢進し、p-gp 発現量が著明に増大していた。一方、それ以外の部位では糖鎖付加に変化は見られず、Middle で Pept1 発現量が増加しているのみであった。Upper でのみ糖鎖付加が亢進した要因としては、今回 5-FUを経口投与によりラットに与えたため、Middle, Lower に比べ、Upper では非常に高い濃度の 5-FU に曝露されたためだと考えられる。つまり、Upper では高濃度の 5-FU が小腸上皮細胞に直接作用したことでトランスポーターの翻訳もしくは翻訳後修飾過程、そして P-gp の発現量が変化したと考えらる。また、Middle や Lower では Upper に比べて 5-FU の曝露濃度が低く、影響は小さいと考えられるため、糖鎖付加の変化のような直接的な作用はなく、食餌量の減少のような間接的、二次的な作用が Pept1 の発現量に影響を及ぼしたと考えられる。本検討内容については、日本薬学会第136年会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに計画通り、消化管吸収過程に寄与する薬物輸送担体の発現量の変化を明らかにした。次の段階として、これらの輸送担体の基質薬剤を用いてその体内動態を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
次段階として、薬物輸送担体の基質薬剤の体内動態データを用いて、薬物速度論的解析を進める。これにより今後、臨床上のリスクについても定量的に解析を行うことが可能となり、最終的には、消化管障害時の吸収動態評価系の構築が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度における研究は順調に進んでいたが、2016年3月の日本薬学会にて発表した研究結果については、今後の研究に大きな影響を及ぼすと考えられた。そのため、本結果について、公の場にて多くの研究者との討論をし、その後に研究を進めたいと考えた。そのため、研究費をより効果的にしようするため次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの計画通り、消化管障害に変動を受けることが明らかとなった薬物輸送担体の基質薬物の体内動態の評価に使用する。
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