研究実績の概要 |
肝内胆管癌組織48症例についてβ4, β6インテグリンの発現と細胞外基質との関連を調べた結果、β4のリガンドであるラミニン5、β6のリガンドであるテネイシンCの発現とそれぞれ関連がみられた(P<0.001, P=0.016)。β4とラミニン5, β6とテネイシンCの発現を蛍光二重染色で解析すると、β4, β6の発現は細胞膜および基底膜様部位に局在し、ラミニン5, テネイシンCの発現は細胞質にみられた。β4, β6の発現が強い部位でラミニン5およびテネイシンCも強い発現を示していた。ラミニン5およびテネイシンCの免疫組織化学的発現と臨床病理学的所見との関連を調べた結果、ラミニン5の発現は肉眼型では胆管浸潤型および胆管内発育型で腫瘤形成型よりも強く(P=0.019)、発育様式では浸潤性発育で膨張性発育よりも強かった(P=0.045)。肝静脈侵襲(P=0.034)、リンパ節転移(P=0.029)との関連がみられ、ラミニン5の発現が強いほど生存率が低かった(P=0.015)。テネイシンCの発現は、浸潤性発育との関連がみられた(P=0.031)。 インテグリンβ6により活性化するTGF-β1と、TGF-β1により活性化し増生するα-SMA陽性癌関連筋線維芽細胞を免疫組織化学的に解析しβ6の発現との関連を調べた。TGF-β1は細胞質に発現がみられ22例(46%)が陽性(>25%)で、β6と正の相関を示した。臨床病理学的所見との関連を比較すると、門脈侵襲、肝内転移、生存率と関連がみられた。α-SMAは41例(85%)で間質に陽性(>25%)でβ6との相関はみられなかった。 以上より、β4, β6インテグリンは細胞外基質ラミニン5, テネイシンCおよびTGF-β1の発現と関わり、肝内胆管癌の亜分類と関連して異なる発現を示すこと、さらに臨床病理学的所見と関連することが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後さらに、肝内胆管癌におけるインテグリンβ4, β6の増殖や浸潤、転移と関連する機序および因子を解析し、細胞外基質を介した活性化機構を明らかにすることを目的とする。 1. インテグリンβ4, β6の発現局在に関する検討。(1)肝内胆管癌組織におけるβ4, β6の局在と臨床病理学的所見との比較を行う。(2)胆管癌細胞株を用いβ4, β6の発現局在と細胞の増殖、浸潤、移動能との関連を調べる。2. インテグリンβ4, β6活性化に関わる細胞外基質と成長因子受容体の影響を調べる。胆管癌細胞株を用い、細胞外基質ラミニン、フィブロネクチン、テネイシンコートディッシュ上で細胞を培養後、インテグリンβ4, β6の発現を解析する。さらに、EGFR, ErbB2, c-Metなどの受容体因子との関連を調べる。3. インテグリンβ4, β6と肝内胆管癌遺伝子変異およびその活性化経路との関連を調べる。(1)胆管癌細胞株を用い、インテグリンβ4, β6遺伝子の発現をsiRNAで抑え、肝内胆管癌遺伝子変異によるシグナル伝達経路(KRAS/BRAF/MEK/ERK, PIK3/AKT/mTOR)との関連を調べる。
|