研究実績の概要 |
肝内胆管癌および細胆管細胞癌は、その発生母地と発現形質の特徴から分類について国内外ともに議論されており、これらの腫瘍本態の性質を解明し分類することが必要とされている。本研究では肝内胆管癌の組織材料および株化培養細胞を用い、インテグリンα6β4(β4)およびαvβ6(β6)とその細胞外基質を介した腫瘍進展に関わる因子を解析し、進展機序を解明することを目的とした。 昨年度までに、肝内胆管癌組織48症例を用いてインテグリンβ4, β6の発現を免疫組織化学的に解析した。その結果、β4は96%, β6は73%で発現がみられた。臨床病理学的所見との関連を比較すると、発生部位では傍肝門部型で末梢型よりも強く、肉眼型では胆管浸潤型および胆管内発育型で腫瘤形成型と比較して強い発現を示した。分化度は高分化型および中分化型と比較して低分化型で低い発現がみられた。また浸潤性発育で強い発現を示し、胆管侵襲の有無とも関連がみられた。細胞外基質との関連では、β4はラミニン5と、β6はテネイシンCとそれぞれ発現に相関がみられた。発現の局在は、β4, β6の発現が強い部位でラミニン5, テネイシンCも強い発現を示した。臨床病理学的所見との関連では、ラミニン5は胆管浸潤型および胆管内発育型、浸潤性発育で強くみられ、肝静脈侵襲、リンパ節転移、予後と関連がみられた。テネイシンCの発現は浸潤性発育と関連がみられた。 さらにβ6により活性化されるTGF-β1と、TGF-β1により活性化し増生するα-SMA陽性癌関連筋線維芽細胞との関連を免疫組織化学的および培養細胞株を用いて調べた。TGF-β1は46%で陽性で、β6と正の相関を示した。臨床病理学的所見との関連では、門脈侵襲、肝内転移、予後と関連がみられた。α-SMAは85%で癌細胞の腺管周囲に陽性であった。 最終年度は、学会発表および論文投稿を行い、成果を報告した。
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