研究課題/領域番号 |
15K19176
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
關谷 暁子 金沢大学, 保健学系, 助教 (10452111)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スタチン / ADAMTS13 / 血栓 |
研究実績の概要 |
【背景】本研究では、HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)のもつ抗血栓作用のメカニズムを明らかにし、スタチンの新規抗血栓薬としての有効性について検討する。平成29年度は、前年度にひき続き、スタチンによるa disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13 (ADAMTS13)発現誘導機構について検討した。
【方法および結果】ヒト肝臓星細胞由来LX2細胞をフルバスタチンの存在下で培養すると、ADAMTS13 mRNA発現量はスタチンの濃度に依存して増加した。この効果はメバロン酸経路の中間代謝産物であるメバロン酸の共存下でほぼ完全に打ち消され、ファルネシルピロリン酸(FPP)の共存下でも部分的に打ち消された。しかし、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)の共存下では打ち消されなかった。低分子量GTP結合蛋白の阻害剤をスタチンの代わりに添加する実験では、FPPの下位に存在するRasの阻害剤、GGPPの下位に存在するRac1および Rhoキナーゼの阻害剤はADAMTS13 mRNA発現量に優位な影響を与えなかった。
【考察】フルバスタチンは肝星細胞によるADAMTS13発現を増加させ、その作用は、FPPを介した経路の阻害によるものであると考えられる。しかしながら、FPP以下に存在する、低分子量GTP結合タンパク質の関与については特定できなかった。このことは、以前、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いて同様の検討を行った際の結果とは異なるものであった。今回使用したスタチンは、肝臓よりも、血管内皮への作用が強いフルバスタチンであったため、今後、他の種類のスタチンを用いてさらなる検討をすること、スタチンによるシグナル伝達経路の活性化の動態など、さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スタチンのもつ抗血栓作用のひとつの側面として、フルバスタチンが肝星細胞におけるADAMTS13の産生を増加させることを示したが、その機序まで明らかにすることはできなかった。所属機関の施設老朽化に伴う改修工事のため、研究実施場所を使用できない期間があり、研究計画に遅れが生じてしまったため、研究補助期間を1年間延長した。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね変更はない。 研究期間を1年間延長し、平成29年度中に遂行予定であった、スタチンによるa disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13 (ADAMTS13)発現誘導機構についてさらに検討する。HUVEC、LX2を用いて、スタチンが関与する複数のシグナル伝達経路がADAMTS13発現にどのような影響を与えているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の施設老朽化に伴う改修工事のため、研究実施場所を変更することになった。そのため、機器や物品の移動、新たな場所での研究環境整備等のため、3ヶ月程度、実験が遂行できない環境であった。また、改修に関わる物品整理や、移転実施計画の策定等に多大な労力を割くことになり、研究遂行に十分な時間を確保することができなかった。以上の理由から、研究計画が当初よりも遅延したため、補助事業機関を1年間延長した。 当初計画では今年度が最終年度の予定であったため、翌年度分として請求した助成金はない。今年度分を次年度に繰り越し、もともと予定していた研究計画の遂行に使用する。
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