研究実績の概要 |
【背景】本研究では、HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)のもつ抗血栓作用のメカニズムを明らかにし、スタチンの新規抗血栓薬としての有効性について検討する。平成30年度はスタチンがa disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13 (ADAMTS13)発現を誘導する際に関与するシグナル伝達経路を検討した。
【方法および結果】ヒト肝臓星細胞由来LX2細胞をフルバスタチンの存在下で培養すると、ADAMTS13 mRNA発現量はスタチンの濃度に依存して増加した。フルバスタチンに代えて、P38MAPキナーゼ阻害剤であるSB203580 、MEK阻害剤であるU0126、JNK阻害剤であるSP600125、PKC阻害剤であるGF109203X、PI3K阻害剤であるLY294002を添加して同様に培養したところ、SB203580 、U0126、SP600125、LY294002を添加した場合にADAMTS13発現の増加が認められた。GF109203Xを添加した場合には変化がなかった。
【考察】フルバスタチンは肝星細胞によるADAMTS13発現を増加させ、その作用は、シグナル伝達経路におけるP38MAPK、MEK、JNK、PIK経路の阻害によるものであることが示された。このことは、以前、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いて同様の検討を行った際の結果とは異なるものであった。今回使用したスタチンは、肝臓よりも、血管内皮への作用が強いフルバスタチンであったため、今後、他の種類のスタチンを用いてさらなる検討をすること、スタチンによるシグナル伝達経路の活性化の動態など、さらなる検討が必要である。
|