自律性血管運動(vasomoiton)は、細動脈において栄養や酸素を効率よく運搬するための自律的な血管収縮・拡張運動である。申請者は 上腕部のvasomotionを記録し、その各周波数成分が虚血性心疾患に潜む血管内皮機能障害、腎機能障害、炎症、糖尿病と関連することを発見した。このvasomoitonは駆血の必要がないため、従来の血管内皮機能(FMD)検査法よりも簡便で再現性良く、適用血管も限局されない可能性を有している。したがって、vasomotionは新しい血管内皮機能の評価法となりうるが、そのメカニズムや有用性につい ては詳しく検証されていない。本研究の目標は、「自律性血管運動(vasomotion)を応用した新しい血管内皮・平滑筋機能検査法の開発とその有用性の検討」であり、以下の実験を行った。 H27年度に岡山大学に移籍したために、申請時のメタボリックシンドロームのモデルラットから、非アルコール性脂肪肝・動脈硬化モデルであるSHRSP5/Dmcrラットに変更した。本モデルは、安価かつ高脂肪食下で動脈硬化を発症するため、本実験の遂行に適している 。その結果として、SHRSP5ラットには新たに心臓の拡張機能障害が認められ、本成果はJ Atheroscler Thromb.に掲載された。H29年度は、このSHRSP5モデルでは、vasomotionの振幅や発生頻度が大きくなることがわかった。H30年度では、さらにNO合成酵素阻害薬L-NAMEを投与して心筋梗塞の発症に成功し、Int J exp path.に掲載された。
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