研究課題/領域番号 |
15K19179
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松村 康史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80726828)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パンデミッククローン / 全ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
2011年と2012年に京都府・滋賀県下の急性期病院で10施設において、臨床検体より分離されたESBL産生大腸菌498株について、薬剤感受性、耐性および病原遺伝子検出、サブクローン解析を行った。解析済みの643株のデータと合わせ、2001年~2012年の全対象株1141株についてのデータ解析を行った。これにより、3種類の特徴的なグループA,B,C(特にC)がESBL産生大腸菌の増加に寄与していることが明らかとなった。AはCTX-M-14産生H30Rサブクローンで、2002年に出現し増加した後、減少傾向を示していた。BはCTX-M-15産生H30Rxパンデミッククローンで、2006年に出現し一定数を保っていた。Cは、CTX-M-27産生H30Rサブクローンで、2006年に出現し急増し2010-2012年において半数以上を占めていた。これら3グループを中心に、代表的な菌株45株を選択し、全ゲノムシークエンス解析を行った。全ゲノムによる系統樹解析から、Cが未報告の新たなサブクローンであることがわかった。このサブクローンは、特徴的な遺伝子を有しており、PCR法での簡易検出に成功した。アメリカやオーストラリアの分離株もCTX-M-27産生株はこのサブクローンに属することがわかり、地域的な広がりにとどまらず、H30Rxのようなパンデミッククローンである可能性が示唆された。これまでの研究結果により、薬剤耐性大腸菌増加の原因としてのクローン性増殖の実態が明らかとなっただけでなく、全ゲノム解析によりそのクローンが世界的分布を疑う新規クローンであることを明らかにした。今後の耐性菌制御には本クローンの特徴を明らかにし、対策することが重要であると考えられ、公衆衛生上重要なクローンの発見という意味で、本研究は大きな意義を持っているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画により平成28年5月までに予定されていた、解析(薬剤感受性、耐性遺伝子検出、タイピング、病原因子解析、全ゲノム解析)が予定より若干早く終了した。また、次のステップである国際学会での発表についても、平成28年4月に欧州臨床微生物感染症学会(ECCMID 2016)において行うことが決定している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、これまでの結果について、論文化、ウェブサイトでの公開について引き続き進めていく。新規クローンの簡易検出系を他のクローンも同時に検出できるよう改良し、実際にこれまでの分離株に用いて妥当性を検証する。今後も予定通り進行する見込みで、平成28年度中に研究は終了する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
企業側のコストダウンにより、想定よりもシークエンス等の解析費用が安くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たなクローン検出系の開発、国際・国内学会の旅費、論文校正、投稿料等に使用する予定である。
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