研究課題
2001~2012年に京都府・滋賀県下の急性期病院で10施設において、臨床検体より分離されたESBL産生大腸菌1141株についてのデータ解析を行った。その結果、ST131型クローンのうち3種類の特徴的なグループ1,2,3(特に3)がESBL産生大腸菌の増加に寄与していることが明らかとなった。グループ1はCTX-M-14産生H30Rサブクローンで、2002年に出現し増加した後、減少傾向を示していた。グループ2はCTX-M-15産生H30Rxパンデミッククローンで、2006年に出現し一定数を保っていた。グループ3は、CTX-M-27産生H30Rサブクローンで、2006年に出現し急増し2010-2012年において半数以上を占めていた。これら3つのグループを中心に、代表的な菌株45株を選択し、全ゲノム解析を行った。全ゲノムによる系統樹解析から、グループ3は、クレードCに属する未報告の新たなサブクローンであることがわかった。このサブクローンは、他のクローンには存在しない特異的遺伝子を有しており、M27PP1と命名した。アメリカ・カナダ・オーストラリア・タイ等他地域のCTX-M-27産生株も株はこのサブクローンに属することがわかり、このサブクローン(サブクレード)をC1-M27と命名した。日本のみならず世界的な分布が認められ、H30Rxのようなパンデミッククローンである可能性が示唆された。この研究結果により、薬剤耐性大腸菌増加の原因としてのST131のクローン性増殖の実態が明らかとなっただけでなく、全ゲノム解析によりそのクローンが世界的分布を疑う新規クローンであることを明らとなった。今後の耐性菌制御には本クローンの特徴をさらに検討し、対策につなげることが重要であると考えられ、公衆衛生上重要なクローンの発見という意味で、本研究は大きな意義を持っているといえる。
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Emerging Infectious Diseases
巻: 22 ページ: 1900-1907
10.3201/eid2211.160519