研究課題
家族性アミロイドポリニューロパチー (FAP) や糖尿病は、小径線維ニューロパチー (SFN) で発症することが多いが、小径線維の異常を客観的、定量的に捉えることは困難である。本研究では、SFNの最適な客観的、定量的評価法の確立と新たな早期診断、予後予測マーカーの探索を目的とする。計画初年度である平成27年度は、FAP24例、FAP未発症キャリア9例、医原性アミロイドニューパチー (ドミノ肝移植セカンドレシピエント) 5例、糖尿病5例、その他のニューロパチー10例、健常人10例にて、生検皮膚組織を用いた表皮内神経線維密度の解析、神経生理学的評価、末梢神経の画像解析および生化学的検査を網羅的に行った。その結果、表皮内神経密度は、健常人に比べ、FAP、医原性アミロイドニューパチー 、糖尿病、および他の小径線維障害優位のニューロパチーでは有意に減少を認めた。FAPにおいては、トランスサイレチンの変異型において、表皮内神経密度の減少に差を認めるとともに、罹病期間、感覚障害の重症度、神経伝導検査および温痛覚閾値異常と相関を認めていた。また、FAP未発症キャリアや耐糖能異常など疾患の未発症の時期からも減少しており、表皮内神経密度はこれらの疾患において、早期診断のマーカーになりうることがわかった。また、MR-neurographyによる末梢神経のイメージング法の最適な検査条件の検討を行い、健常人とくらべ、FAPにおいては、末梢神経の輝度、大きさに変化を認めることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
計画初年度である平成27年度は、表皮内神経密度が、小径線維ニューロパチーの早期診断および病態評価のマーカーとして有用であることが明らかになってきた。また、神経生理学的検査および画像検査を組み合わせることにより、客観的、定量的な評価法、診断法を確立できつつある。研究はおおむね当初の計画通りに進行している。
次年度は、前年度の計画を継続して行うと同時に、更に研究を発展させ、最適なSFNの客観的、定量的な評価法の確立を行うとともに、新規の早期診断、予後予測マーカーを同定する。また、小径線維の神経障害および神経再生についての病理学的解析を行い、SFNの進行様式および病期に応じた病態を明らかにする予定である。
SFNの早期診断における生化学的指標の検索、同定の為のプロテオミクス解析の最適な条件設定を行っている過程であるため、本年度の質量分析装置関連費用の一部が未使用であったため。
平成27年度は、更に症例数を増やし、LC-MS/MS法を中心とした生化学的解析を行う。また、小径線維障害および神経再生を中心とした病期毎の病態解析を行うために研究費を用いる。
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