研究実績の概要 |
1. 昨年までに、ヒト近位尿細管上皮細胞(HK-2)において、酸化ストレス(H2O2)処理がmegalinのタンパク質発現を上昇させることを明らかにした。そこでリアルタイムPCRにてmegalinのmRNA発現を定量したところ、酸化ストレスの添加によりmegalin mRNAの上昇を確認することができた。また、タンパク質の取りこみをDQ-red albuminを用いて評価したところ、DQ-red albuminの取り込みが酸化ストレス処理細胞で亢進することが明らかになった。また、H2O2によるmegalin発現の上昇はアルブミンを含まない培地中でも確認された。そのため、megalin発現の上昇はタンパク取り込みに先行して起こることが示唆された。 2.megalin発現上昇のメカニズムを解明するために、PI3KおよびAkt阻害剤(それぞれwortmannin, MK-2206)により細胞を前処理したところ、H2O2添加によるmegalin発現の上昇が抑制された。HK-2細胞において、H2O2がAktをリン酸化し、PI3KおよびAkt阻害剤によって阻害されることを確認した。 3.昨年までに、ストレプトゾトシン誘導1型糖尿病ラットにおいて腎皮質megalin発現が上昇することが明らかになった。興味深いことに、megalin発現の上昇は尿中にアルブミンが漏出しないステージ(腎症前期)に起こっていた。そこで、糖尿病ラットに腎保護薬で酸化ストレス抑制作用の強いテルミサルタンを投与したところ、腎皮質megalin発現が抑制された。免疫組織化学的解析にて、糖尿病ラットにおけるmegalin発現の変化が尿細管管腔で起こっていることを確認した。この時、酸化ストレスの指標として腎皮質3-ニトロチロシンを測定したところ、糖尿病ラットで有意に上昇し、テルミサルタン投与によりその上昇は有意に抑制された。
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